<社説>森友学園疑惑 解明へ参考人招致を急げ


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 大阪府豊中市の国有地売却問題は、政治家側の口添えによって国民の財産が破格の安値で払い下げられた疑惑が濃くなってきた。

 学校法人森友学園(大阪府)が小学校建設用地の格安払い下げを受けた問題で、政治家の関わりが次々と明らかになっている。
 ところが、安倍晋三首相は「政治家の不当な働き掛けはなかった」と言い張り、政府や自民党内の内部調査に否定的な姿勢だ。学園の籠池泰典理事長の要請で講演し、建設中の小学校の名誉校長に就いていた昭恵夫人は辞任した後、沈黙を貫いている。国民の不信感は強まるばかりだ。
 一刻も早く、籠池理事長や売却に関わった国土交通省の担当者や議員らを参考人招致し、真相を徹底究明すべきだ。
 籠池理事長が陳情したのは、自民党の鴻池祥肇参院議員である。2014年4月に議員会館を訪れ、金品が入った紙包みを手渡そうとしたが、鴻池氏は「無礼者と言って投げ返した」と説明している。
 さらに鴻池氏は学園側から受けていた20万円の政治献金を返却するという。だが、国への働き掛けを否定する鴻池氏の説明と事務所側の対応の落差は大きい。
 事務所作成の面談記録には、籠池理事長から「上からの政治力で早く結論が得られるようお願いしたい」などと記されていた。繰り返し陳情を受け、秘書らが国とやりとりを重ねていた。
 疑惑は多い。近畿財務局が小学校用地に充てるには「購入のみ」と通告していたのに、15年5月、売却を前提として特約付きの10年賃貸契約が結ばれた。同年1月には、籠池理事長は事務所に「賃料年4千万円の提示あり。高すぎる。何とか働き掛けてほしい」と連絡し、年2730万円に収まった。
 小学校用地で見つかったごみの除去費用が8億円超に上ると大阪航空局が独自算定したことも前例がない。近畿財務局は鴻池氏側に複数回、経過を報告していた。
 異例ずくめの経緯があり、結果的に次々と学園側の値切り要求が実現している。
 さらに、籠池理事長は政治団体・大阪維新の会の大阪府議にも、小学校の設置認可への協力を求めていたことも明らかになった。
 首相や有力議員の権勢にすがり、値引き攻勢をかけたのが本筋に見える。不自然すぎる国の動きや議員側との金銭のやりとりの有無など、複合疑惑の解明が急務である。