<社説>高校生3割貧困 困窮による進学断念防げ 生徒の希望支える社会を


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 家計の厳しさ故に多くの県内高校生が進学断念を余儀なくされているという実態が浮き彫りとなった。生徒の希望を支える社会をどう築いていくか、私たちは重い課題に直面している。

 家庭の経済状況が高校生の進路や日常生活にどのような影響を与えているかを調べた県の高校生調査の中間報告が発表された。
 困窮の中で育った生徒は学費や昼食費、交通費を稼ぐため、アルバイトに追われている。それでも金が工面できずに学業を諦め、自らの進路を絶たれる生徒がいる。苦境にあえぐ生徒の救済は沖縄社会の責務であり、放置してはならない。

アルバイトが学業圧迫

 今回の調査は、世帯収入を世帯人数で調整した「等価可処分所得」を補正した127万円を基準とし「困窮世帯」「非困窮世帯」に区分した。127万円未満の「困窮世帯」は29・3%に上る。
 単純比較はできないが、2015年の県調査で明らかになった沖縄の子どもの貧困率(29・9%)と同水準にある。全国平均(16・3%)の約2倍だ。
 県民所得は全国最下位にあり、低賃金、重労働、不安定な就労環境という雇用を巡る構造的問題が高校生を持つ世帯を苦しめている状況が調査からうかがえる。貧困世帯の半数以上が食費に悩み、満足に衣服を買うことができない。苦しい家計の中で学費を工面するのは困難を伴うはずだ。
 特に生徒のアルバイトの異常な実態が調査で鮮明となった。困窮世帯では高校生の32・6%が現在アルバイトをしていると答えた。収入の使途は「昼食代」(34・8%)、「家計の足し」(33・7%)、「通学のための交通費」(24・1%)などである。
 生徒の労働力が家計を支えているのは明らかだ。1週間当たりの就労日数が「4日以上」と答えた生徒は困窮世帯で53・4%にも上っている。これでは学業への影響は避けられない。
 家計を助けるためアルバイトに励むあまり学業不振に陥り、結果的に進学を断念するような悪循環は断たなければならない。何らかの財政支援が必要だ。
 通学手段の確保に苦しんでいることも今調査で判明した。約半数の世帯で、交通費を削るため、生徒は家族による送迎によって通学している。公共交通機関の未整備、割高な交通費が家族の負担となっている。都市部から離れた地域では特に深刻な問題になっており、通学費支援は不可欠だ。
 無料塾などの学習支援の拡充も必要だ。困窮世帯が抱える課題の洗い出しを急ぎたい。

切れ目ない支援不可欠

 県が昨年3月にまとめた「県子どもの貧困対策推進計画」は、厳しい経済環境に置かれた子どもの支援について、乳幼児、小・中学生、高校生、若者とライフステージごとの施策を提示している。この計画で目指しているのは「切れ目のない支援」だ。
 今調査の自由筆記欄では「子どもたちが進学していけばいくほど親は借金が増え、絶望的な気持ちになります」「小学校、中学校の時より高校の方がお金がかかるのに、援助があまりないのが不満です」という切実な声が保護者から寄せられた。それに応えるのが「切れ目のない支援」である。
 貧困対策推進計画は高校生期を対象に就学継続の支援や中途退学の防止、キャリア教育などの充実に取り組むとしている。具体的な施策としては給付型奨学金制度の創設や低所得者世帯に対する学習支援の充実を盛り込んだ。
 中でも給付型奨学金制度は最も求められる施策の一つだ。奨学金返済の重荷を取り除くことができれば、生徒は安心して自らの進路を選び取ることができる。沖縄の次代を担う人材の育成はかけがえのない未来への投資となることを改めて確認したい。
 経済問題に悩む生徒を支える施策の充実は待ったなしだ。全県的な議論を進めたい。