<社説>米軍夜間飛行「必要」 「自由使用」改めるべきだ 騒音防止協定の厳格化を


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 米軍機の夜間飛行訓練は住民生活に多大な影響を及ぼす。住民が安心して暮らす権利より軍事を優先する姿勢は受け入れられない。
 在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官が夜間早朝の米軍機の飛行を原則禁じた騒音防止協定について「操縦士は一定の飛行時間をこなさなければならず、その中には夜間飛行もある」と述べた。
 夜間の爆音で住民の平穏な暮らしを妨げることは許されない。
 騒音防止協定にある米軍の「運用上必要」など、騒音防止効力を打ち消す文言を削除して厳格化し、夜間飛行を完全禁止にしない限り、住民は永遠に救われない。

住民生活と相いれない

 調整官は「騒音の苦情は真剣に捉えている」と述べた。真剣に捉えても住民の苦情に応えられないということは「軍事訓練」と「住民の暮らし」は両立できないことの証しである。
 「尖閣など難しい問題がある。制限で即応性が落ちれば危険だ」との調整官の見解には同意できない。日本の安全保障上、在沖米軍の操縦士らの熟練度を上げるため夜間訓練は不可欠で、住民はそのことを理解し、我慢してほしいということなのだろうか。
 政府や米軍は事あるごとに、安全保障環境の悪化を在沖米軍の存在理由に挙げる。
 だが、深夜・早朝を問わず住宅地を覆う爆音が住民の安心・安全に暮らす権利を奪い、安眠を妨げられる状況の改善は放置されたままだ。沖縄に過重な基地負担を押し付け、多くの住民を犠牲にした安全保障の在り方こそ見直すべきである。
 北朝鮮が6日に弾道ミサイル4発を同時発射したのは、在日米軍基地攻撃の訓練だったと朝鮮中央通信(北朝鮮)は報じている。日本国内に米軍基地は存在しないことが、最も有効な安全保障なのである。
 米軍基地が過度に集中する沖縄は、特に危険な状況にある。沖縄にとっての脅威は、米軍基地の存在そのものである。
 それは何も安全保障上の問題だけではない。米軍人・軍属による殺人などの凶悪事件や事故が後を絶たないことも脅威なのである。米軍も日本政府も、その認識が欠落している。
 調整官は「沖縄社会との関係も大事だ」とも述べている。心からそう思うならば、せめて午後10時から午前6時の時間帯の飛行は全面禁止にすべきだ。それを実現しない限り、沖縄社会との関係を米軍は軽視しているとの批判は免れない。

5・15合意破棄を

 騒音防止協定は、県や基地関係市町村からの要請を受けて1996年の日米合同委員会で合意された。県側は、嘉手納基地での夜間・早朝の一定の騒音回数が横田、厚木両基地の5倍以上に上るとして飛行禁止時間は「午後7時から午前7時」を要望していた。だが、騒音防止協定では「午後10時から午前6時」と「本土並み」にされた。
 理由は「沖縄(の米軍)だけに厳しい協定を結ぶことはできない」だった。米軍基地を沖縄に過度に集中させておきながら、騒音規制だけ「本土並み」とすることは矛盾も甚だしい。
 政府の自浄能力に期待できない以上、県民、国民の力で変えねばならない。
 米軍が「必要だから訓練をやる」と言えば、日本政府がそれを認めている状況は主権を放棄したに等しい。
 米軍機の爆音など、米軍基地に県民が戦後72年も苦しめられている原因は、復帰当日に開かれた日米合同委員会の合意にある。
 その際の議事録「5・15メモ」には、在沖米軍基地の使用条件は「返還以前の期間において使用していたとおり」と明記している。無条件に米軍の「自由使用」を認めた合意を破棄することが真の主権回復につながる。そのことを安倍政権は深く認識すべきだ。