<社説>韓国大統領罷免 国民の分断を修復せよ

 韓国憲法裁判所が朴槿恵(パククネ)大統領を罷免する決定を言い渡した。朴氏は即時失職した。出直し大統領選が60日以内に実施される。韓国国内の混乱に一応の区切りは打たれたが、今後は選挙戦などを通じ、国民に生じた分断の修復、日本をはじめ周辺国との関係構築など山積する課題の解決が急務だ。

 憲法裁は大統領の地位と権限の乱用をはじめ、憲法違反が在任期間全般にわたり持続的に行われたと認定した。
 朴氏の疑惑は、親友の崔順実(チェスンシル)被告への機密文書流出による国政介入にとどまらず、崔被告と共謀したサムスン電子からの贈収賄などが挙げられている。憲法裁は8人全員一致で罷免を決定し「国民の信任を裏切った」と断罪した。
 憲法裁がこれほど激しい言葉を使うのは、韓国の民主化の歴史を振り返れば納得できる。1948年の建国以来、軍政、独裁政権の続いた韓国では、軍内部のクーデターもありながら、学生、労働者、人権派の宗教家らによる民主化運動が実を結び、87年の民主化宣言を勝ち取った。政権の腐敗に対して市民らが文字通り血を流して勝ち取った民主化である。
 朴氏に掛けられた疑惑は自らの蓄財や親友への便宜供与などであり、独裁政権時代の政治家と変わらない。しかも捜査に対して非協力的な態度を続けてきた。民衆の怒りが沸点に達したのは、朴氏自らが招いた結果でもある。
 特別検察官らの捜査チームが大統領側近や国内総生産(GDP)の2割を占めるサムスンの経営トップを起訴したのは、事件による政財界への悪影響と同時に世論の高まりに突き上げられた面も大きい。
 民主化後の現行憲法下で初めて任期を全うできず、韓国憲政史上最大の不祥事を起こした朴氏は起訴される可能性が高い。だが起訴を待たず、朴氏には経緯を明らかにする責任がある。分断された国民の再統一に向けて、朴氏には国民が納得する説明を果たす義務が残されている。
 内政以外でも、韓国は日本との間に「従軍慰安婦」を象徴する少女像の撤去を巡り火種が残る。北朝鮮のミサイル発射に伴う緊張の高まりや米軍の最新鋭型迎撃システム配備で中国の反発もある。
 残された課題の解決に向けては、多くの国民の信を得た安定政権が不可欠だ。内外の信頼を得るためにも腐敗と決別し、真の民主化政権樹立に努力してもらいたい。