<社説>陸自も「日報」保管 隠蔽体質は防衛相に責任


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 現場の報告をうのみにし、結果的に虚偽答弁を繰り返した稲田朋美防衛相の責任は重大だ。即刻、辞任すべきである。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報の電子データが陸上自衛隊に少なくとも1月ごろまで保管されていたことが発覚した。防衛省は日報の情報公開請求に対し昨年12月、不開示決定の理由を「陸自は廃棄済み」としたが、虚偽だったということだ。
 しかも陸自は公表を検討したが、防衛官僚が保管の事実を公表しないよう指示したという。事実なら犯罪的行為であり、断じて許されない。隠蔽(いんぺい)に次ぐ隠蔽は組織に自浄能力がないことの表れである。
 防衛省の隠蔽体質は今に始まったことではない。
 1998年の防衛装備品納入を巡る背任事件では防衛庁(現防衛省)の組織的な証拠隠しがあった。2005年の空調工事を巡る旧防衛施設庁官製談合事件では幹部が部下に関係書類を破棄させた。
 04年にあった海上自衛隊護衛艦乗組員の自殺では「存在しない」とした艦内での暴行を調べたアンケート原本が見つかっている。
 今回の日報には、停戦合意などのPKO参加5原則に抵触する「戦闘」の言葉が多用されていた。防衛省にとって「不都合な文書」を隠す体質は改まっていないということだ。事の重大性からしてトップが責任を負うべきである。
 稲田氏は「徹底的に調査し、隠蔽体質があれば私の責任で改善したい」と述べている。省内の隠蔽体質をいまだに認識できないとあっては、省内改革を任せるわけにはいかない。稲田氏は「戦闘」を「武力衝突」と言い換えて事実を隠す隠蔽体質の持ち主だ。隊員のリスクをも軽視する稲田氏に防衛相を務める資格はとうにない。
 防衛省が2月、統合幕僚監部で保管していた事実を発表し、日報の一部を公表したことを稲田氏は「徹底的に調査して公表させた」と述べ、自身の指導力の成果としている。言葉通りなら、陸自で保管していた事実も同時に公表されていたはずだ。
 稲田氏への報告は再探索を指示してから1カ月後である。報告遅れは稲田氏が省内を掌握できていない証しだ。稲田氏の意に反して隠蔽されたならば、シビリアンコントロール(文民統制)が全く機能していないことになる。稲田氏の責任はやはり重大である。