<社説>微細プラスチック 海を守る多角的な対策を


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 プラスチック製品に依存しすぎている私たちの生活スタイルを見直す時期にきている。

 大量に海を漂い、環境破壊が懸念されている微細なプラスチックごみ「マイクロプラスチック」が、沖縄の沿岸から高密度で検出されていることが分かった。
 マイクロプラスチックの人体への影響は分かっていないが、影響が出てからでは遅い。リサイクルの徹底、プラスチックごみの不法投棄の取り締まり強化、漂着ごみの回収など海を守る多角的な対策が求められる。
 マイクロプラスチックとは、ペットボトルやレジ袋、漁具などのプラスチックごみが海に流され、時間をかけ、紫外線や波によって壊れて5ミリ以下に細かくなったものだ。
 プラスチックにはポリ塩化ビフェニール(PCB)など有害物質を吸着する性質があり、これをのみ込んだ魚や海鳥が体内に蓄積し、人体への影響も懸念される。
 世界経済フォーラム(WEF)は2016年1月、少なくとも毎年800万トンが海へ流出、対策を取らなければ50年までに重量換算でプラスチックごみが魚の量を上回るとの報告書を発表している。
 漂着ごみ研究家の山口晴幸防衛大学名誉教授が昨年、県内の11島57海岸を調査したところ、1平方メートルの調査枠から検出された総数量が11万6364個だった。山口氏は「紫外線が強く、大量のごみが漂着し集積する沖縄の沿岸域は、沖合や県外の沿岸域より事態は深刻」と分析している。
 中国、インドネシア、フィリピンなどからの漂着が多い八重山、宮古など先島の海岸域の検出量は極めて多かった。
 18年夏に世界自然遺産登録を目指す「奄美・琉球」の対象地域の一つである西表島の北側は漂着ごみを長期放置していた。離島は漂着ごみの回収・処理費用負担が厳しく、長期放置が常態化している。政府が都道府県に補助金を一括交付する対策事業を拡大強化する必要がある。
 プラスチック容器のリサイクル率は14%で、紙の4分の1、鉄鋼の約6分の1にすぎない。プラスチックのリサイクルを進めて海などへの流出を防ぐ対策の強化が急がれる。
 地球規模の連携と同時に、レジ袋の代わりにエコバッグを使うなどプラスチックを使わない身近な取り組みも重要だろう。