<社説>北部基幹病院整備 県は構想を早期実現せよ


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 健康で豊かな生活に医療の充実は欠かせない。地域によって医療体制に差があってはならない。県は北部全12市町村など関係者と連携し、速やかに北部の医療体制の充実を進めるべきだ。

 県立北部病院と北部地区医師会病院を再編・統合し、基幹病院とする構想の実現を求める北部12市町村住民総決起大会が名護市であった。離島を含む北部全域から約3200人(主催者発表)が参加し、500病床の機能集約病院設置などを求める大会決議を全会一致で採択した。
 北部地域では救急対応などの急性期医療は北部病院と医師会病院が担っている。両病院は多くの診療科が重複している一方で、ともに医師が少なく、医師の過重負担が生じ、慢性的な医師不足に悩まされている。
 心筋梗塞や頭部損傷など重篤な3次医療に対応できないこともあり、入院患者の約2割が中南部へ転院せざるを得ない。
 さらに両病院での分散や医療機能の縮小が症例数を少なくし、医師の育成を困難にして新たな医師を確保できないという「負の連鎖」も起きている。
 北部地区では2006年に北部病院の産婦人科が医師不足による休止に追い込まれたことをきっかけに、医療体制構築が喫緊の課題となった。議論の末、14年には県の研究会が両病院の統合を提言した。
 しかし県は今年2月の県議会定例会でも「統合する際の課題の抽出作業に取り組んでいる」と答弁し、統合は見通せない。
 経営形態の違う病院の統合に課題が多いことは理解できる。しかし時間をかけ過ぎることにより、負の連鎖が進んでいるのではないか。
 今回、採択された「やんばるの医療を守る宣言」は行政と医療機関の責務に加え、「安易な夜間診療を控える」など住民の責務を盛り込んだことが特徴だ。限られた医療資源の中で住民自らが努力して地域医療を守るという気概を感じる。
 北部の代表は27日、決議と11万人余の署名を持って県知事や県議会議長に要請する。
 沖縄21世紀ビジョンの将来像5本柱の一つは「心豊かで、安心・安全に暮らせる島」というものだ。その中に「誰もが生きがいをもち、十分な医療や福祉が受けられる沖縄」との項目が含まれる。お題目にしてはならない。