<社説>うるま沖米ヘリ墜落 日米一体の訓練ではないか


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 「研修」と称しながら実態は日米共同の「訓練」だったのではないか。国民、県民が知らぬ間に米軍と自衛隊の共同訓練、一体化が進んでいる疑念がさらに強まった。

 2015年8月、うるま市沖で陸上自衛隊員2人が同乗した米軍ヘリが米軍艦船に墜落し負傷者を出した事故で、共同通信が米軍事故報告書を入手した。
 それによると、米軍ヘリは米艦船へのロープ降下訓練の際に回転翼が艦首マストに接触し、コントロールを失ったとされる。訓練は「多国籍」で行われ、陸自を含め同乗者12人を「戦闘装備部隊」の名称で一体として表現しているという。
 事故原因については「事故前の機体異常や米兵の習熟度不足を否定」する一方、結論部分は黒塗りで明らかにされていない。
 報告書の写真はヘリの機体上部が原形をとどめず、危険な訓練をうかがわせているという。
 重大事故にもかかわらず発生から1年半余が経過した今も米軍、防衛省は事故原因を公表していない。再発防止のためにも米軍事故報告書の速やかな開示を求める。
 事故の詳しい発生状況、原因とともに、米軍と自衛隊の共同行動が何を目的にしていたかも明らかにされねばならない。
 米軍ヘリに陸自隊員が同乗していたことについて防衛省は「研修」「見学」と説明し、「訓練」だったことを否定している。
 しかし報告書が陸自を含め「戦闘装備部隊」と一体で表現していることで、専門家は「特定の戦闘任務を持ち一体行動する訓練だったのでは」と指摘している。
 事故機は、国際テロ組織アルカイダへの作戦にも従事した米陸軍の特殊作戦航空連隊所属の特殊作戦用ヘリである。これにテロ・ゲリラ対処を担うとされる陸自中央即応集団「特殊作戦群」の隊員が搭乗していたのである。
 事故は集団的自衛権の行使を容認する安保関連法の国会審議中に起きた。安保法制を先取りし、米軍の対テロ戦に自衛隊が共同対処することを念頭に置いた訓練ではなかったか。
 日米防衛協力指針(新ガイドライン)は米軍と自衛隊の施設共同使用の拡大を明記し、米軍キャンプ・ハンセンなどの共同使用や自衛隊「研修」が活発化している。
 沖縄の基地負担増につながる在沖米軍基地の共同使用、不透明な自衛隊研修の増加に強く反対する。