<社説>しまくとぅば調査 日常会話で継承を図ろう


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 日常生活の中で使ってこそ、しまくとぅばの継承は可能となる。家庭や学校で積極的にしまくとぅばで会話する機運を高めたい。

 県文化振興課がまとめた2016年度しまくとぅば県民意識調査によると、13年度の第1回調査に比べ、しまくとぅばの使用頻度は減少していることが分かった。理解度も前回より低くなっている。
 06年に「しまくとぅばの日」(9月18日)を県条例で制定して以来、地域社会や教育現場でしまくとぅば継承の取り組みが盛んだ。しかし使用頻度、理解度は逆に下がったのである。
 残念な結果だ。継承の取り組みがなぜ大きな効果を生んでいないのか分析を急ぎ、対応策を講じたい。沖縄文化の基盤である島々の言葉が依然として危機的状況にあることを重く受け止めたい。
 使用頻度を聞いた設問で「主に使う」「共通語と同じくらい使う」が13年度調査では計35・4%であるのに対し、15年度調査では27・8%に減った。逆に「全く使わない」が13年度は14%だったのが、15年度は21%に増えた。特に10~30代の若年層で使わない人が多い。
 県民生活の中から、しまくとぅばが遠のいているのは明らかだ。学校や地域社会、家庭のそれぞれに見合った対策が求められる。
 しまくとぅば継承の取り組みで、学校の授業が大きな役割を担うのは間違いない。しかし、授業時間の確保が難しいのが実情だ。学校単位の実践を促すためにも、県教育委員会や市町村教委の総合的な対応も必要だ。学習指導要領の枠内で、しまくとぅばの授業をどう組み込むか、実質的な議論を急ぎたい。指導者の育成も不可欠だ。
 民間レベルの取り組みも、しまくとぅば継承の機運を高める上で有意義だ。社内あいさつ、対外的な営業、広報活動など企業活動のさまざまな場面でしまくとぅばを活用してほしい。日常生活の中でしまくとぅばに接する機会が増えるはずだ。
 家庭でもしまくとぅばを積極的に使いたい。祖父母の世代が孫世代に語るしまくとぅばは生きた教材となる。1日数分程度の会話が継承の大きな支えとなる。
 今調査で、しまくとぅばが必要だと考えている人は76・9%、親しみを持っている人は78・4%に上る。多くの県民はしまくとぅばに愛着を持っている。それを継承の力へとつなげたい。