<社説>高浜原発再稼働へ 司法が安全神話に加担した


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 原発の安全性が担保されてない中、再稼働すれば国民は危険にさらされる。安全を無視した大阪高裁決定に強く抗議する。

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた昨年3月の大津地裁の仮処分について、大阪高裁が関電の抗告を認めて取り消す決定をした。
 高裁は東京電力福島第1原発事故後に策定された原子力規制委員会の新規制基準を過大評価し、高浜原発の安全性を認定した。容認できない。
 高裁は新基準を「事故の教訓を踏まえ、最新の科学的、技術的知見に基づいて策定され、不合理とはいえない」とし、適合する原発は「審査の過程に不合理な点がない限り安全性を具備する」と断定した。規制委の認識に明らかに反する。
 田中俊一委員長は2015年8月、原発の安全性について「絶対安全とは申し上げないし、事故ゼロとも申し上げられない」と述べている。規制委の認識を踏まえれば、高浜原発の安全性など認定できないはずだ。
 高裁は「炉心の著しい損傷を防ぐ確実性は高度なものになっている」「基準地震動規模の揺れが連続するとはほぼ考えられず、起きたとしても安全性は確保されている」とも指摘した。
 規制委自身が「絶対安全」を保証していなのである。高裁が安全性をいくら取り繕っても信用できない。関電の主張をほぼ追認するなど、新基準に適合すれば万全とする新たな安全神話に、司法が加担したと断じるしかない。
 沖縄の米軍基地問題に象徴されるように、司法が国策を公正中立に判断しない傾向が顕在化していることに、強い危機感を抱かざるを得ない。
 高浜4号機では昨年2月の再稼働直前に、ボルトの締め付け不足で1次冷却水漏れが発生した。対策を取って再稼働したが、機器の設定ミスで原子炉が自動停止している。今年1月にはアームの長さ約112メートルのクレーンが倒れ、2号機の原子炉補助建屋と燃料取り扱い建屋の外壁が一部壊れた。
 関電は早ければ4月下旬ごろにも運転を再開するとみられるが、トラブルが続く状況での再稼働はあり得ない。
 使用済み核燃料の最終処分場も決まっていない。高裁が運転差し止めを取り消したとはいえ、関電は原発を再稼働すべきではない。