<社説>「辺野古」行政指導 協議終了まで工事止めよ


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 菅義偉官房長官は、ことあるごとに「わが国は法治国家だ」と強調する。そうであるなら法に基づいた行動をしてもらいたい。名護市辺野古の埋め立て工事に関する限り、政府は法、あるいは法の趣旨をねじ曲げ、一方的な解釈を沖縄に押し付けようとするからだ。

 県は辺野古の岩礁破砕許可が期限切れとなった後も工事が続けられていることに対し、沖縄防衛局に許可を再申請するよう行政指導した。事前協議なしに実施されている海底掘削(ボーリング)調査についても、事前協議をするよう求めた。
 沖縄防衛局は指導に対して「本来は文書を受け取る立場にない」として、岩礁破砕許可も「申請する予定はない」と突っぱねている。
 これが法治国家のあるべき姿だろうか。県は当該海域に漁業権が存在し、岩礁破砕を伴う工事を実行するには許可が必要だと主張している。漁業法22条で、漁業権を変更するには「都道府県知事に申請してその免許を受けなければならない」とする条文が根拠だ。
 これに対し、国は名護漁協が漁業権を放棄したことで岩礁破砕許可は不要との立場を取る。国は漁業権消滅の根拠に漁業法31条(組合員の同意)、水産業協同組合法50条(特別決議事項)を挙げる。だが二つの条文を読む限りでは、いずれも漁協内の手続きの在り方を示したにすぎない。
 いずれも正当性があるとする県と国の主張が平行線であるならば、協議する必要がある。意見が対立する場面で話し合う姿勢すら見せず、一方的な解釈を押し付けるのでは、法治国家という以前の問題だ。少なくとも政府が辺野古埋め立て工事に臨む態度は、民主国家とは言い難い。
 県は沖縄防衛局が指導に従わなければ、警告や告発、埋め立て承認の撤回、工事差し止め訴訟などの措置を検討するという。
 県の方針をけん制して、菅官房長官は、これまで辺野古代執行訴訟の福岡高裁那覇支部判決を持ち出し「(判決の)主文の趣旨に基づいてお互い尊重する」と主張してきた。
 福岡高裁那覇支部や国地方係争処理委員会が県と国に求めたのは、解決に向け双方が「真摯(しんし)に協議」することだ。一方的な解釈の押し付けや民意を無視した工事強行のはずがない。政府は県と協議のテーブルに着いて話し合う必要がある。それまで工事は止めるべきだ。