<社説>人口1億人割れ 高齢化前提に社会変えよう


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 日本の人口は36年後に1億人を割り込み、50年後には8808万人となる。国立社会保障・人口問題研究所がこんな推計をまとめた。政府が目標とする「50年後も人口1億人維持」の実現は困難で、深刻な人口減少、超高齢社会になる。社会構造自体を人口減と高齢化を前提として変えなければならない。

 推計によると日本の人口は2015年の1億2709万人から50年後の65年には3割減る。出生率は05年の1・26から15年は1・45と上がったが、人口を維持する目安の2・07には遠く及ばず、政府目標の1・8にも届かない。
 高齢化の進展は顕著だ。65歳以上の割合は15年の26・6%から65年には38・4%と増加する。1人の高齢者を2・1人で支える構図は65年には1・2人となる。
 人口減と高齢化は地方では既に深刻だ。
 一方、沖縄は人口が増えている数少ない都道府県の一つだ。国勢調査によると15年に143万3566人に達し、5年前から2・9%増えた。人口増は東京圏の4都県に愛知や沖縄など8都県のみだ。
 しかし、県内でも中城村や与那原町のように過去10年で2割近く増えた自治体もあるが、伊平屋村や座間味村は2割減った。離島や本島北部は人口減と過疎に既に直面している。
 さらに65歳以上人口が15歳未満人口を初めて上回り、生産年齢と呼ばれる15~64歳人口は逆に初の減少に転じた。高齢化も始まっている。
 沖縄の人口ピークは25年といわれ、少子化対策は喫緊の課題だ。沖縄の待機児童数は深刻で、15年時点で3980人と全国ワースト2位だった。働き手不足なのに子どもを保育園にも預けられない現状は、対策を怠った政府、行政の責任だ。女性が出産後も働き続けられる職場環境の整備と男性の育児参加を進めるべきだ。
 ただし少子化対策をしたとしても「団塊ジュニア」が既に40代になるなど親になる世代が少なくなった現状では大幅な人口増は見込めない。
 働き手を増やすために定年制の弾力運用などで元気な高齢者が働き続けられる仕組みが必要だ。
 現在の少子高齢化は、過去に手をこまねいて対策が遅れた結果だ。未来に対して責任を持つために、人口推計から得られる警鐘を生かしたい。