<社説>辺野古県民集会 沖縄は屈しない、諦めない


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 国が強行する名護市辺野古の新基地建設を阻止するとの強い意思が示された集会だった。米軍キャンプ・シュワブゲート前に29日結集した約3千人(主催者発表)は国の強硬姿勢にノーを突き付け、今後も決して屈しない、諦めないという固い決意を改めて確認した。

 今回は沖縄防衛局がシュワブ沿岸の護岸工事に着手してから初の大規模集会だった。新基地反対に加えて、「共謀罪廃案」「4・28屈辱の日を忘れない」、さらに米軍属女性暴行殺人の被害者への追悼も掲げた。
 いずれも、1952年4月28日発効のサンフランシスコ講和条約を根源として今につながる地続きの問題だ。
 日本から切り離された後、米施政権下の沖縄では、強権的な基地接収が相次いだ。一方、高度経済成長に走る中で、本土の米軍基地は次々と沖縄に移されてきた。住民の生命や尊厳が奪われた事件・事故をはじめ、騒音被害、環境汚染、人権侵害が繰り返され、今なお解決に至っていない。復帰を境に、抑圧者が米国から日本政府に入れ替わっただけだ。
 集会決議は「政府による工事強行、それを追認する司法、三権一丸となって沖縄に襲いかかっている」と、21世紀の「銃剣とブルドーザー」を厳しく指弾している。
 県民は知事選や国政選挙などで新基地建設反対の意思を何度も表明してきた。その要求を無視し、対話を閉ざして、強大な権力で沖縄をねじ伏せようとしているのが安倍政権だ。法解釈を変えてまでも沖縄には他府県並みの民主主義や人権を許さず、構造的差別と植民地主義を持ち込む。これでは独裁国家かと見まごうばかりだ。
 辺野古の現場では多くの人たちが非暴力の闘いを重ねてきた。その抗議行動を抑圧すると危惧されているのが共謀罪だ。法案が成立すれば、抗議しようと話し合っただけで捜査当局が踏み込んできかねない悪法である。
 政府は「埋め立て工事着手」を大々的にアピールした。「原状回復は困難」との報道も見られるが、現段階ではまだ石詰めの袋を5個置いたにすぎない。実情を知らない大多数の国民向けに「後戻りできない」と印象操作する狙いが透けて見える。
 沖縄は戦後、人権や自治権を求める運動を続け、自らの手で勝ち取ってきた歴史と誇りがある。その不屈の精神は今後も続く。