<社説>基地県外移設 全国的な議論を広げよう


この記事を書いた人 琉球新報社

 沖縄にとって「県外移設」とは何かを確認しようというシンポジウムが開かれた。安全保障のために米軍普天間飛行場の移設が必要なら、基地の過重負担に苦しむ沖縄県内ではなく県外に移すべきだという議論である。

 「県外移設」は新基地建設問題の解決を目指すだけでなく、基地集中は差別であるとして沖縄と本土との関係を根本的に問うものでもある。辺野古の海が破壊されようとしている今、議論を広げ全国の世論に働き掛けることは喫緊の課題だ。
 県外移設は仲井真弘多前知事、翁長雄志知事とも公約に掲げてきた。しかし県外では沖縄の負担は理解してもらえても、いざ引き取るとなると反対の声が出て頓挫してきた。
 シンポでは批判点として次の6点を挙げ、議論した。
 (1)自分の町に引き取る覚悟など持てない(2)沖縄に要らないものは本土にも要らない(3)安保を前提にした県外移設・引き取りには応じられない(4)本土で引き取れば、その地域の人たちが苦しむ(5)本土で引き取るといっても結局決まらない(6)結局、本土でも弱者に押し付けられる。
 (2)(3)については、8割の日本国民が日米安保を支持している状況を変えるには何十年もかかると指摘された。(4)(5)(6)については、全ての自治体を候補地として国会で議論し、決まれば憲法95条にのっとって特定の地方公共団体のみに適用される特別法として住民投票に付されるべきとした。
 (1)と関連して「本土の移設先で米兵による事件が起こったら君は責任を取れるのか」と言われた経験も報告された。しかし、沖縄もどこも、一方的に覚悟や犠牲を押し付けられるべきではない。解決するには全ての自治体を候補として民主的に議論するしかない。
 こうした議論を踏まえ、最後に沖縄以外の全国の全ての自治体を候補地として国民的議論を行うよう求める提言が示された。全自治体が候補なら県外の全ての人が当事者意識を持つはずである。
 辺野古の工事を中止し普天間飛行場の運用を停止した上で、当事者性を自覚した人々によって議論が始まることを期待したい。議論の過程で、米軍基地は必要か、日米安保は必要か、真の安全保障とは何かについても結論が導かれることになるだろう。