<社説>仏韓両新大統領 異論に耳傾け分断修復を


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 フランス大統領選の決選投票で、欧州連合(EU)の結束を訴えた超党派の市民運動「前進」を率いる中道系候補マクロン前経済相が、極右の国民戦線(FN)のルペン候補を大差で破った。

 朴槿恵(パククネ)前大統領(収賄罪などで起訴)の罷免に伴う韓国大統領選は、革新系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)候補が当選した。
 両国に共通するキーワードは世界を覆う「分断」である。敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、異論には耳を貸そうとしない空気が広がれば危機を招く。両新大統領は分断修復に向けて、国民を一つにするよう手腕を発揮してほしい。
 フランスをはじめ先進国では、格差が拡大し、中間層が没落し続けている。政治への不満、先行きへの不安から、反EU、反移民、自国第一主義を掲げる極右勢力が台頭している。
 国連安全保障理事会の常任理事国であり、先進7カ国(G7)メンバーのフランスで極右大統領が誕生した場合、排外的な世界潮流が加速し、EUは解体の危機に陥るという見方もあった。
 敗れたとはいえ、ルペン氏の得票率は34%で、票数は極右として最多となった。中間層の不満を一定程度吸収したといえる。さらに約25%が棄権し、白票や無効票が投票数の約1割となった。マクロン氏を選んだというより、反ルペンの消極的な選択の側面が強い。
 一方、韓国では、国政私物化に怒った世論が朴被告を引きずり降ろして、大統領選挙が実現した。公正な社会を求める庶民の思いを追い風に文氏は当選した。
 しかし、前大統領罷免と今回の激しい選挙戦で、韓国社会は保守と革新系両派の対立が激化している。保守、中道の2候補の得票率を足すと、文氏を上回る。共に民主党は少数与党となり、他党の協力が欠かせない。対立を乗り越え、若者の雇用など山積する課題に取り組まねばならない。
 文氏は「従軍慰安婦」問題では、朴前政権が日本と結んだ2015年の合意について再交渉すると表明している。真の和解に向けて日韓対話を続けていく必要がある。北朝鮮への対応も待ったなしだ。
 マクロン氏は「われわれを傷つけた分断と全力で闘う」と演説した。文氏は会見で「国家の安定」を強調した。両氏とも格差社会の改革に全力を挙げてほしい。