<社説>米軍開き直り発言 人命重視し占領意識改めよ


この記事を書いた人 琉球新報社

 恩納村の米軍キャンプ・ハンセン内の安富祖ダム工事現場で銃弾のような物が見つかった問題で、在沖米海兵隊の政務外交部長が「発射が推測される2カ所のレンジ(射撃場)を特定した」と発言し、事実上、米軍による流弾であることを認めた。抗議に訪れた県議会の米軍基地関係特別委員会に答えたものだ。

 外交部長は「このようなことが起こってはいけないが、敷地内で発生したことだ」とも発言している。つまり「米軍基地内で起きていることに、とやかく言うな」という意味だろう。その前に「起こってはいけない」と言っているが、流弾の危険性への認識が欠如している。
 今回の流弾は基地内とはいえダム工事現場であり、民間人が出入りしていた。しかも作業員の車と水タンクが被弾している。幸いにも人的な被害はなかったが、もし人が被弾していたら、生命を危険にさらす重大事になっていた。
 被弾したタンクはフェンスと100メートルしか離れていない。周辺には水田が広がっており、住民が農作業をしている。今回は基地内にとどまったが、基地の外まで達していてもおかしくない状況だったはずだ。外交部長の「基地内発生」発言は開き直りもいいところだ。
 キャンプ・ハンセンからと思われる民間地への流弾事故は、これまで少なくとも18件起きている。1956年には実弾射撃場からの銃弾が金武町伊芸区の3歳女児の太ももを直撃した。64年にも伊芸区の住宅内にいた19歳の女性の太ももを銃弾が貫通する事故が起きている。76年には同区の民家の庭に砲弾が落下して爆発し、民家を破壊した。2008年には同区の民家の乗用車が被弾した。
 外交部長は過去の民間地への流弾事故を知らなかったのだろうか。それとも知った上で発言したのか。いずれにしても住民の生命を軽視する姿勢を見過ごすことはできない。
 日米地位協定では基地内の管理権を米軍に認めている。しかしやりたい放題を認めているわけではないはずだ。ましてや基地のある場所は米国ではない。まぎれもなく沖縄県土だ。占領意識がにじみ出た外交部長の姿勢を許すわけにはいかない。
 事故が起きた以上、安全性が確保できているとは言い難い。住民の生命、財産を脅かす実弾射撃訓練は全て廃止すべきだ。