<社説>新大学入試案 公平性の確保が課題だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 文部科学省は、大学入試センター試験に代わり2020年から導入する「大学入試共通テスト(仮称)」の原案を公表した。英語は民間の検定試験を利用し、国語と数学で記述式問題を出すのが改革の柱だ。重要なのは受験生の公平性を確保することだ。知識偏重からの脱却を掲げた理念を実現できるよう、関係者の不安を払拭(ふっしょく)してほしい。

 文科省案で英語は高校3年の12月までに検定を2回受験でき、良い方の結果を使える。英検やTOEICなどから水準を満たす検定が「認定試験」となる。
 ただし、検定で学力が適切に測れるかは疑問が残る。検定はビジネスや留学など想定する目的はさまざまで、必ずしも高校の学習指導要領に準拠していない。難易度にも差がある。その中で点数と評価をどう出すかはまだ見えない。
 さらに民間検定試験は会場数や実施回数にばらつきがあり、検定料も5千円台から2万5千円以上するものもある。例えば県内の離島など遠隔地の高校生が年2回、検定を受けるのは時間も費用も大きな負担だ。地域や家庭の経済状況で受験機会が制限されてはならない。
 記述式問題は国語で3~4ページの問題文を読み80~120字で解答する。数学は数式・問題解決の方法などを答える。採点は民間業者に委託し、段階別評価をするという。50万人規模が受験する大学入試では明確な採点基準が公表されないと、受験生は自己採点にも困るし、出願にも支障を来す。ここでも公平性の確保が必要だ。
 そもそも新テストは、知識偏重の入試から思考力や主体的に学習に取り組む姿勢を評価する入試へ転換を図ることから出発した。それには現行のセンター試験の一発勝負から、複数回の受験が可能な到達度評価に転換し、各大学が個別2次試験で丁寧に学力を判定する-との構想だった。
 文科省は知識に加え、思考力、判断力、表現力の評価を重視する改革だとする。そうであれば中学、高校の授業も教科書を教えるだけの知識伝達型から、教科書以外の教材も使い、社会情勢に興味関心を広げて子ども自らが主体的に学ぶ形態に変えねばならないが、まだ道半ばだ。
 文科省は意見公募などを経て、6月中に実施方針を作成する。改善点を洗い出し、受験生の身になって新テストを構築してほしい。