<社説>「総理の意向」文書 首相は国民の疑念に答えよ

 議論のすり替えなどではなく、安倍晋三首相には真摯(しんし)な説明をお願いしたい。民進党が入手した学校法人加計学園(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り「総理の意向」などと記された文書のことだ。

 計画の進展に当たり、首相が圧力をかけていたなら議員辞職に値する。潔白と主張するなら自ら国民が納得できる説明をすべきだ。
 政府は文書自体を「出どころも明確でない怪文書」(菅義偉官房長官)として、沈静化を図る考えだ。確かに文書の真偽自体は検証する必要がある。ただ学部新設の経緯を振り返れば、疑念を持たれてもやむを得ない。
 獣医学部新設を計画した加計学園の理事長は、米国留学時代から30年以上首相と親交のある「腹心の友」(首相)だ。加計学園が獣医学部新設を特区に提案したのは2007年に始まる。14年まで15回の提案は採用されなかった。
 事態が動いたのは15年。愛媛県今治市と加計学園が「獣医学教育特区」を改めて提案した。安倍政権が日本再興戦略に盛り込み、同年末には特区に決定した。
 今治市は特区認定を受け、36億円余の土地の無償譲渡や施設整備費96億円の助成を決めている。
 学部新設に対しては、日本獣医師会も反対してきた。10年8月に出した獣医師会声明は「特区に名を借りた地域おこしや特定の一学校法人による大学ビジネス拡大の場(手法)と化すようなことがあってはならない」と批判している。
 改めて民進党が入手した文書を振り返る。「平成30年4月開学を前提に、逆算して最短のスケジュールを作成(中略)これは官邸の最高レベルが言っていること」「最短距離で規制改革を前提としたプロセスを踏んでいる(中略)これは総理のご意向」となっている。
 構図は森友学園問題とそっくりだ。国有財産を破格の値段で譲り受けたり、反対論が強い大学の新学部設置が可能になったりするなど、首相は「お友達」に便宜を図っていないかと国民は疑念を抱いている。
 首相は3月28日の参院決算委員会で加計学園の問題を問われ「圧力が働いたことは一切ない」と断言した。ならば自ら証明してもらいたい。文書の真偽、内容の虚実、それらの解明を官僚に指示できるのは首相しかいない。自らの進退にも関わる問題だ。国民の疑念に答えられるのは首相自身しかいないことを自覚すべきだ。