<社説>国連報告書に反論 政府は開き直らず耳傾けよ

 この国の言論の自由が揺らいでいる。民主主義を危ぶむ国際的な警告に対して、政府は耳を貸さないどころか、自らの行為を正当化した。「共謀罪」法案にも見られるように、内心・思想の自由をも脅かす政府の開き直りを断じて認めるわけにはいかない。

 沖縄平和運動センターの山城博治議長が基地建設反対運動に関する容疑で逮捕、長期勾留されていたことについて、国連の特別報告者ら3専門家と1機関が懸念する文書を、2月に日本政府に送っていた。
 政府は回答で「適切に対応した」「主張は完全に間違っている」と否定した。だが、国連の特別報告者は、国連人権理事会の下で「表現の自由」など特定の国の人権問題を調べる専門家であり、真摯(しんし)に耳を傾けて反省すべきだ。
 今回、文書を送ったデービッド・ケイ氏は、国際人権法や国際人道法の専門家だ。昨年4月に来日して調査した際には、辺野古新基地に抵抗する市民への過度な権力行使にも警告を発している。
 国際社会からは、日本の言論・表現の自由の基盤がぐらつき始めていると受け止められている。山城議長の5カ月間に及ぶ長期勾留については、不当な拘禁だとして、国内の刑法学者や国際人権団体から強い批判を浴びた。国連特別報告者も懸念を示したことで、言論・表現を封じようとする政府の不当性が改めて浮き彫りになった。
 山城議長の長期勾留は、衆議院を通過した「共謀罪」法案の先取りとも指摘されている。国の政策に抗議するのは表現活動であり、憲法が保障した正当な権利だ。政権の意に沿わない市民運動を萎縮させる狙いが見え隠れする。
 その「共謀罪」法案に対しても先日、別の国連特別報告者が「プライバシーを不当に制約する恐れがある」と指摘した。政府はむきになって抗議したが、日本は国連人権理事会の理事国でもあり、大人げない反応はいかがなものか。質問に抗議でしか回答できないのは国際関係上、問題があると指摘する識者もいる。
 6月にスイスのジュネーブで開かれる国連人権理事会で、ケイ氏は日本に関する報告を出す。山城議長も「民主主義の圧殺」を訴える予定だ。民意を無視し抗議を弾圧するのなら、もはや独裁国家でしかない。政府は国際人権法に基づいて、民主主義を守り抜く施策を進めるべきだ。