<社説>自殺率ワースト6位 悩み苦しむ人救う社会に


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 自殺死亡率の高さは、社会のひずみの表れではないのか。誰もが幸せを感じ、人生に絶望することなく、希望を持って生きられる社会づくりが急務だ。

 2017年版自殺対策白書によると、日本の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は約90の国と地域との比較でワースト6位(19・5人)だった。女性は11・7人でワースト3位、男性は27・7人で12番目に高かった。
 白書に盛り込んだ警察庁の統計では、16年の自殺者数は2万1897人で、7年連続で減少した。1978年以降で最も多かった2003年の3万4427人から大幅に減ったが、世界からみれば日本の自殺死亡率は高い。
 成人男女3千人を対象とした厚生労働省の16年調査では「本気で自殺したい」と考えたことのある人が23・6%に上った。約4人に1人が自殺を本気で考える社会が健全だと言えるだろうか。
 日本財団は成人男女約4万人を対象とした16年調査を基に、過去1年以内に自殺未遂を経験した人は53万人超と試算している。実効性ある自殺防止対策の確立が喫緊の課題であることに変わりない。
 自殺の原因は「健康問題」や「経済・生活問題」「家庭問題」「勤務問題」が目立ち、複数の問題が影響しているとみられる。
 病気や借金に苦しみ、働き過ぎで精神的に追い詰められて自殺した人たちの苦しみはいかばかりか。自殺者が2万人を超える状況は、不幸以外の何物でもない。
 5歳ごとの年齢階級別に15年の死因を分析すると、15~39歳の5階級で「自殺」が1位だった。若い世代の自殺は依然深刻な状況にある。いじめ根絶策などを含め、社会全体で有効な対策を講じたい。
 過去1年間で、過労死ラインとされる月80時間を超える残業をした社員がいた企業は40%に上ったとの調査結果もある。長時間労働を強いる状況を変えねば、過労自殺は防げない。
 政府は今夏、新たな自殺総合対策大綱を閣議決定する予定である。だが、行政による相談ダイヤルの存在や、改正自殺対策基本法が国民にほとんど認知されていない現状を改善できるかが成否の鍵を握る。
 悩み苦しむ人たちに支援策が届かなければ意味はない。自殺に追い込まれる人たちを救う社会の構築に社会全体で取り組みたい。