<社説>待機児童ゼロ未達 見通しの甘さ踏まえ戦略を


この記事を書いた人 琉球新報社

 認可保育所などに入れない待機児童の解消について、安倍政権は2017年度末に「ゼロ」にする目標を事実上断念した。新たな計画でゼロ達成を3年遅らせる。

 保育所は増えているが、それを上回る入所希望者に追い付いていない。さらに保育士不足も深刻だ。政府はこれまでの見込みの甘さを踏まえて計画を練り直し、子育て環境の整備に努めてほしい。
 待機児童を巡っては昨年、「保育園落ちた日本死ね」との匿名ブログをきっかけに問題が表面化し、政府批判が噴出した。政府は「小規模保育」の定員拡大や事業所内保育所の拡充、不足している保育士の待遇改善などを盛り込んだ緊急対策を発表した。
 だが、状況は改善されていない。県内でも4月の速報値で待機児童数が2253人に上った。県全体では昨年より283人減少しているものの、うるま市や沖縄市で大幅増となる自治体もあった。
 市町村によると、認可保育所の新設などで定員数は着実に増えているが、申込者が予想より増える現象が起きている。多くが保育士の数が必要な0-2歳児だ。
 さらに保育士確保ができないため受け入れが滞っている保育所もあり、保育士の待遇改善も課題だ。
 政府は新計画「子育て安心プラン」で、18~20年度の3年間に認可保育所など22万人分の受け皿を整備し、20年度末までに待機児童を解消すると掲げた。各自治体で前倒しでの達成を後押しするため、必要な予算を2年間で確保する。
 また、21~22年度でさらに10万人分を上積みし、25~44歳の女性の就業率を現在の約73%から80%へ上昇させる目標を立てた。
 待機児童の定義については、保護者が復職を希望するなら「保護者が育児休業中」の場合も待機児童に含めるよう見直された。18年度から全自治体が適用するため待機児童数はさらに増える可能性がある。
 育児休業明けや足りないと言われる0-2歳児対応など保育需要を把握し、受け皿を整備することが求められる。
 3歳児神話が言われるように日本では長く育児は女性の仕事とされ、子育て政策は後回しにされてきた。そのツケが待機児童だ。働きたい人たちが安心して子育てと仕事を両立できる社会をつくれるよう、政府は早急に対応する必要がある。