<社説>採用面接解禁 自分に合う企業見極めを


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 来春卒業予定の大学生らに対する企業の採用面接が1日解禁された。人手不足で企業の採用意欲は高く、学生優位の「売り手」市場の中、就職活動は大詰めを迎えた。就職する大学生、雇用する企業の双方にとって、満足度の高い就職・採用結果となるよう期待したい。

 リクルートワークス研究所が4月に発表した大学生・大学院生求人動向調査によると、企業の求人数は前年比2・8%増の75万5100人と4年連続で増加した。このため企業の採用競争は激しさを増している。
 働きやすさを積極的にアピールする企業が目立っている。職場環境改善が進むのは良いことだが、その一方で、早期に優秀な人材を確保しようと採用活動の前倒し傾向が強まり、既に学生に内定を約束した企業も出ている。5月1日時点で大学生の3人に1人が内定を約束されているとの調査もある。
 採用活動に関する経団連の指針は会社説明会の解禁を3月1日、面接などの選考活動を6月1日、正式な内定を10月1日としており、2年連続同じ日程だ。
 しかし経団連に加盟していない外資系や中小、IT関連などの企業が独自の日程で採用活動をしているとみられている。採用時期の前倒しで、学生が本来取り組むべき勉学や研究がおろそかになっては本末転倒だ。企業は節度ある採用活動をしてほしい。
 「売り手市場」で就職しやすい環境のため、大企業を希望する学生が増えている。一方で中小企業には学生の目が向かなくなっている。就職を希望する学生の人数を企業の規模別にみると、5千人以上の大企業が前年の1・5倍の12万4200人と大幅に増えている。一方で300人未満の中小企業は33・0%減の6万6千人だった。
 県内で先月開催された県中小企業家同友会の合同企業説明会でも、参加した学生が例年の6~7割程度にとどまるなど低調だった。
 学生の大企業指向が強まっているが、5千人以上の大企業の求人は前年より1・0%減少しており、狭き門だ。逆に千人以上5千人未満は4・8%、300人未満の企業は3・9%それぞれ増えている。
 学生も大手だけに目を向けるのではなく、自分の適性や得意分野に合った企業を見極めてほしい。中小企業も自社の強みや魅力を学生に積極的に伝え、必要な人材を確保するための努力が必要だ。