<社説>旧駐機場継続使用 主権回復へ地位協定改定を


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 沖縄は軍事植民地かと疑いたくなるような事態だ。米空軍嘉手納基地の海軍旧駐機場について、嘉手納基地は今後も継続して使用する意向を示した。しかも日米両政府が駐機場の移転を明示した日米特別行動委員会(SACO)最終報告での合意に「違反していない」とまで明言した。

 2国間の合意を無視する暴挙に対して、稲田朋美防衛相は今回の使用を「例外的」として米軍の使用を全面的に認める考えを示した。旧駐機場の使用中止も求めていない。
 沖縄は占領地ではない。米軍の一方的な使用継続と、それを追認する日本政府は、静かに暮らしたいという県民の願いを踏みにじっている。県民の生命と人権を軽視する姿勢を直ちに撤回すべきだ。
 日本政府は、単なる運用改善や使用中止要請にとどめる状況ではないことを肝に銘じてもらいたい。米軍が沖縄で両政府の合意を無視できるのは、騒音問題や基地の運用に日本の主権が及ばず、日本政府も物を申せないからだ。元凶は基地の自由使用を米軍に認める日米地位協定にある。日本政府は地位協定改定に踏み込み、沖縄での主権を取り戻す努力をすべきだ。
 SACO最終報告の騒音軽減策は、海軍駐機場を「主要滑走路の反対側に移転する」と明記している。「追加的な施設の整備の実施スケジュールを踏まえ」という前提はあるが、どこにも新駐機場完成後に併用するという文言はない。
 運用上の理由を盾に新旧の駐機場を併用するのであれば、SACOの前提である沖縄の負担軽減を口実に、基地の機能拡大を図った「焼け太り」にほかならない。
 新駐機場の運用が始まったのはSACO合意から20年余りたった今年1月だ。しかも当初から米軍は旧駐機場も利用し、地元住民から「無意味」との指摘があった。
 住民らの怒りは当然だ。移転は本来、住宅地に近い駐機場からの夜間の騒音などを軽減することが目的だ。さらに嘉手納町の調査では、発がん性物質が含まれる可能性のある「黒色粒子」が駐機場の方向から民間地に流れたことも分かっている。
 旧駐機場の利用から透けて見えるのは、日米が共に県民の生命や人権を軽視していることだ。これ以上、県民を危険と騒音にさらすことは許されない。日米とも状況を改善すべく行動するときだ。座視することがあってはならない。