<社説>相次ぐ緊急着陸 米軍機に飛ぶ資格はない


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 相次ぐ米軍機の緊急着陸は、点検・整備体制がずさんなことの証明である。改善の兆しが見られない以上、米軍が県内で実施する全ての飛行訓練を廃止する以外に、県民の不安を払拭(ふっしょく)し、安全を守る手だてはない。

 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが6日、伊江島補助飛行場に緊急着陸した。1日にもCH53大型ヘリが久米島空港に緊急着陸したばかりである。米軍機の緊急着陸は4月以降、確認されただけでも7回に上る。
 まさに異常事態である。県民は日々、米軍の訓練によって危険にさらされていることを米軍は強く認識すべきだ。だが米軍の説明を聞く限り、その意識は希薄である。
 米海兵隊は、伊江島での緊急着陸を「事故を未然に防ぐために警告が点灯した『小さな事案』で、その時点で機体に深刻な問題が生じていたわけではない」と説明した。久米島での事案は「操縦室で警告サインが表示されたため、最寄りの久米島空港に『予防着陸』した」としている。
 米軍の説明に共通するのは、県民に不安を与えたことに対する責任感のなさであり、県民軽視の姿勢である。
 「小さな事案」「予防着陸」などと、事態を矮小(わいしょう)化する印象操作は看過できない。
 整備が万全ならば「警告が点灯」することはないはずだ。米軍にとって「小さな事案」でも、県民にとっては「大きな事案」である。緊急着陸が相次ぐ要因は事態を軽視し、住民の不安を一顧だにしない米軍の姿勢そのものにある。
 緊急着陸は事故を防ぎ、県民や乗員の安全を守るために必要な措置である。一方で、緊急着陸を招かないようにすることは「大きな責務」との意識も必要である。米軍にその認識があるのか疑わざるを得ない。
 点検・整備に最大限努めていても、緊急着陸が相次ぐならば、担当者の技量に問題があるか、もしくは機体に欠陥があるかのいずれかだ。
 人的・物的被害がなければ、問題はないとするような米軍の対応も理解に苦しむ。伊江島に緊急着陸したオスプレイは住民への説明も謝罪もないまま、普天間飛行場に向けて飛び立ち、住民の不安をさらに招いた。
 住民に不安を与えること自体、大きな問題である。米軍にはその認識がない。不安を与えた当事者であるとの意識が決定的に欠けている米軍に、県民の頭上を飛ぶ資格はない。
 このままでは2004年の沖国大米軍ヘリ墜落事故のような事故が再び起きかねない。多くの県民がそれを危惧している。
 日米両政府は緊急着陸が相次ぐ事態を重く受け止め、県民が納得する安全策を講じるべきだ。異常な状況をこれ以上放置することは断じて許されない。