<社説>墜落原因未公表 米軍の無責任さの証しだ


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 墜落事故の原因を公表しないのは、米軍の無責任さの証しにほかならない。

 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが名護市安部の浅瀬に墜落して半年過ぎた。だが、墜落事故がなぜ起きたのかについて、米軍から詳細な説明がいまだにない。
 一つ間違えば、人的被害が出た重大事故である。県民に大きな恐怖と不安を与えた当事者であるとの自覚が米軍にあるならば、直ちに事故調査報告書を公表すべだ。
 許し難いのは、機体の安全性が確認されたとして事故から6日後にオスプレイの飛行を再開したことだ。事故原因を調査している最中の飛行再開などあり得ない。
 日本政府も飛行再開を追認した。その結果が米軍機の相次ぐ緊急着陸である。オスプレイは今月だけでも、伊江島補助飛行場と奄美空港(鹿児島県)に緊急着陸している。これで、機体の安全性が確認されたとは断じて認められない。
 事故調査報告書は、日米合同委員会で日本政府が米側に要請してから6カ月以内に提供されることになっている。日本政府は墜落事故から6日後の昨年12月19日、報告書の写しを提出するよう米側に要請している。いまだに報告書がまとまっていないならば、米側に調査・分析能力がないということである。
 いずれにせよ、米側任せではらちが明かない。この際、基地外で起きた米軍の事件・事故も日本側が捜査権を持つように日米地位協定を改定すべきだ。併せて、日本側が事故現場を統制する仕組みに変える必要もある。
 米軍はオスプレイの墜落事故を「浅瀬に着水」とし、日本政府も「不時着水」としている。一方、米海軍安全センターがまとめた事故統計は、米海兵隊航空機の10万飛行時間当たりの最も重大な「クラスA」の事故に位置付けた。
 日米がそろって墜落という重大事故を矮小(わいしょう)化したことが図らずも証明されたのである。米軍と日本政府には墜落事故に直ちに訂正するよう求める。重大事故を小さく見せ掛けることに腐心するその姿勢こそが、事故を招いていることを自覚することも強く求めたい。
 墜落事故から半年が過ぎており、現段階で報告書がまとまっていないとは考え難い。既に米側の事故調査は終了し、報告書も作成されているのではないか。「6カ月以内」の期限を盾に、提供を先延ばししているのなら不誠実極まりない。
 専門家からは、オスプレイは欠陥機との指摘がある。今回の墜落事故調査の過程で欠陥が明らかになり、不都合な事実を隠蔽(いんぺい)している可能性さえ疑わざるを得ない。
 今後、米側から提供される報告書は詳細なものでなければならない。日本政府は全面公開する責任がある。重要事項を隠すことは許されない。