<社説>県観光収入最高 需要把握進め誘客強化を


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 2016年度の県観光収入が前年度比9・6%増の6602億9400万円となり、4年連続で過去最高を更新した。ただし観光客1人当たりの消費額は前年度比0・8%減の7万5297円で、4年ぶりに前年を下回った。このため県の16年度観光収入目標値6743億円に届かなかった。詳細な分析を進めて、対策を講じる必要がある。

 1人当たりの消費額が減少したのは、円高の影響に加え、クルーズ船客の大幅増に起因しているようだ。クルーズ船客は宿泊施設を利用しないため、支出額が低くなるといわれている。消費額を客層別にみると国内客7万4763円、外国の空路客9万8097円なのに対し、クルーズ船客は3万3656円と半分以下にとどまっている。
 しかし海外観光客の潜在的需要はまだあるのではないか。那覇港新港ふ頭地区では現在、クルーズ船から降りてくる数千人の客の輸送で十分な態勢が整っていない。タクシー待ちに下船から3時間かかることもあり、これでは買い物をしたくてもできないだろう。沖縄側が十分に対応できていない側面がある。このため那覇市が5月から、国際通りまで送る無料シャトルバスの運行を始めた。輸送体制の整備をさらに進める必要がある。
 県と沖縄観光コンベンションビューローが実施した15年度の外国人観光客受け入れ実態調査によると、県内の観光関連事業者の67・4%が「外国語対応ができていない」と回答している。外国語ができる人材雇用や従業員の語学研修を進めたい。
 県は3月、第5次県観光振興基本計画の後期5年に向けた目標フレームを上方修正した。21年度までに入域客数を当初の1千万人から20%増の1200万人、観光収入を当初の1兆円から10%増の1兆1千億円とした。ビジネスツーリズムを推進する沖縄型MICEや国際クルーズ船受け入れ拠点の整備・強化などの施策を推進することにしている。
 さらに県は4月、17年度の入域観光客の目標値を950万人に設定した。前年度比73万人、8・3%の増加を目指す。目標達成に向け、県は夏の臨時便就航、繁忙期に限られる大型機使用を通年化するよう航空各社に働き掛ける。
 内閣府も沖縄観光を後押しするアクションプラン「沖縄観光ステップアップ戦略2017」を発表し、クルーズ船の受け入れ体制整備や交通環境の改善を目的に高速船や小型航空機の活用に向けた実証実験も検討する。人材育成、宿泊機能の拡充強化などさまざまな課題がある。官民挙げての誘客戦略が求められよう。
 観光客が沖縄に何を求めているのかを的確に把握し、その需要に迅速に応える。これこそが国際最高水準の観光リゾート地「沖縄」への道ではないか。