<社説>防衛予算増額要求 外交力強化こそ必要だ


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 第2次安倍内閣発足後、5年連続で伸びている防衛予算がさらに増えそうだ。平和国家日本の在り方に明らかに反する。防衛力の強化ではなく、外交力の強化こそ必要である。

 防衛省は2018年度予算の概算要求で、米軍再編関連経費を含め過去最大の5兆2551億を計上する方針だ。17年度当初予算比2・5%の増加である。
 弾道ミサイルを相次いで発射している北朝鮮への対処策として、海上自衛隊のイージス艦に搭載する改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の取得費472億円を盛り込んだ。
 SM3ブロック2Aは、迎撃を困難にするために通常より高度が高い「ロフテッド軌道」への対応力が優れるとされる。だが、その精度は百パーセントではない。
 防衛装備庁は6月、SM3ブロック2Aで標的を迎撃する試験を実施したと発表したが、成否には触れなかった。防衛省関係者によると、標的を撃ち落とせなかったという。472億円も費やす意味があるだろうか。
 弾道ミサイル発射で世界を威嚇し続ける北朝鮮の挑発行為は非難されて当然である。一方で、防衛力を増強しても完全な防衛体制を構築することはできない。それどころか防衛予算の増大は北朝鮮を強く刺激する恐れさえある。
 中国を意識した予算増も効果に疑問がある。
 南西諸島の防衛強化を重視し、南西警備部隊の施設整備に552億円を充てる。最新鋭ステルス戦闘機「F35」6機を881億円で取得する。
 領空侵犯の恐れのある中国機に対する16年度の航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)は851回で過去最多だった。中国機は尖閣諸島周辺で活動を活発化させている。中国船も領海外側の接続水域に頻繁に現れ、領海侵入も確認されている。
 尖閣諸島周辺での活動を自制しない中国は問題である。
日本の主権を守るために、南西諸島防衛の強化を目指したのだろうが、尖閣問題の根本的な解決にはならない。
 中国外務省は防衛省が過去最大の約5兆2千億円を計上する方針について、直ちに不快感を示している。中国外務省副報道局長は「『中国脅威論』をあおると同時に自身の国防(防衛)予算を増やしている」と批判し「警戒」が必要だと述べている。中国の活動活発化を懸念する。
 南西諸島防衛強化では、墜落事故が相次ぐ新型輸送機オスプレイ4機も457億円で購入する。危険なオスプレイをこれ以上、飛ばすことは断じて認められない。米軍普天間飛行場所属のオスプレイの撤去を求める県民無視であり、許されない。
 政府は「力には力」の思考から脱すべきだ。たとえ困難であっても「対話」の道を歩むことこそが日本のあるべき姿である。