<社説>元米国防長官証言 「辺野古唯一」虚構を証明


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄に過重な負担を押し付ける安倍政権の「辺野古唯一」論は、どう取り繕おうと虚構である。そのことが改めて証明された。

 元米国防長官ペリー氏が米軍普天間飛行場の移設先の決定要因は「安全保障上の観点でも、軍事上の理由でもない。政治的な背景が原因だった」「米国がここに移設しなさいと決定する権利はない。(移設先の決定には)日本政府の政治的な判断が大きく関わっている」と述べた。
 「政治的な背景」や「政治的な判断」とは何か。
 米軍基地問題の沖縄以外への波及を避けることに主眼を置き、沖縄に過重な米軍基地負担を負わせることを躊躇(ちゅうちょ)なく選択した政府の姿勢のことである。それは沖縄差別政策にほかならない。
 米政府関係者の証言は以前からある。元駐日米大使のモンデール氏は2004年、米国務省外郭団体のインタビューで1995年の米兵による少女乱暴事件に関して「(事件から)数日のうちに米軍は沖縄から撤退すべきか、最低でも駐留を大幅に減らすかといった議論に発展した」が、「彼ら(日本側)はわれわれが沖縄を追い出されることを望んでいなかった」と振り返っている。
 ペリー氏は移設先を「沖縄本島東海岸沖」と決定した96年12月の日米特別行動委員会(SACO)最終報告を承認した当時の米国防長官である。モンデール氏は96年4月に橋本龍太郎首相との共同記者会見で普天間飛行場の返還合意を表明した人物である。両氏の証言に、日本政府は反論できまい。
 移設先決定権は日本政府が持っていた。にもかかわらず沖縄の過重負担を解決できる機会を放棄したのである。その結果、米軍人・軍属の事件事故の犠牲が連綿と続いている。昨年の米軍属女性暴行殺人事件も、政府の沖縄に対する差別的な基地押しつけの延長線上にある。
 日本の関係者の話などからも辺野古を移設先とした理由が明確になっている。
 普天間飛行場返還合意時の官房長官だった梶山静六氏は98年、移設先が沖縄以外だと「必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす」と辺野古を移設先とする理由を記していた。
 森本敏氏は防衛相当時の2012年、「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べた。森本氏も軍事的、地政学的な理由ではなく、政治的状況を優先して辺野古に決定したことを認めていた。
 安倍政権の唱える「辺野古移設が唯一の解決策」は沖縄県民のためではなく、県民以外の国民にとっていい解決策ということでしかない。数々の証言や文書が示している。
 全ての国民は「法の下に平等」と明記した憲法14条に、政府の辺野古への新基地建設計画は明らかに反する。直ちに断念すべきだ。