<社説>憲法改正 平和の「砦」崩していいか


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 憲法9条は日本の平和を守る「砦(とりで)」である。その普遍的価値を未来へつなぐのか、それとも崩すのか。どちらが日本にとっていいのかを、真剣に考えることが国民に求められている。

 弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮の不穏な動きを引き合いに、安倍晋三首相は衆院選を「国難突破」と位置付ける。争点の一つは、憲法改正である。
 憲法改正を巡っては、平和主義の根幹である9条が対立軸となる。9条が形骸化すれば、日本の国の形は大きく変容する。日本の将来がかかった重要な選挙であることを強く認識したい。
 想起してほしい。2014年12月の衆院選では、改憲勢力が3分の2以上の議席を占めたことで、安倍政権が勢いづいた。その結果、憲法に反する法律が一気につくられたのである。
 安倍政権は14年7月、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定し、国民から大きな反発を招いた。それでも5カ月後の衆院選で自民党は圧勝した。15年9月に安全保障政策を大転換する安保関連法が成立し、16年3月に施行され、集団的自衛権の行使が可能になった。
 安保関連法は法案段階の15年6月、衆院憲法審査会で憲法学者3人全員が「違憲」と指摘した代物である。自衛隊の海外での武力行使に道を開くことを、国民は結果として後押ししたことを忘れてはならない。
 選挙は一つの政策だけを評価して投票するものではない。だが、最高法規である憲法の改正は国民生活に大きく影響する。そのことを有権者一人一人が深く認識する必要がある。
 自民党は憲法への自衛隊明記を公約に掲げた。維新に加え、安倍政権への対決姿勢を強調する希望も改憲には前向きである。
 改憲に対する各政党の政策、候補者の考えなどをしっかり吟味して投票することは、将来世代に対する責任である。
 琉球新報社が衆院選の県内4選挙区の立候補者に行った政策アンケートで、「オール沖縄」勢力の4氏が改憲に「反対」し、自民4氏と維新1氏は「賛成」と回答した。
 今回の衆院選の結果次第では、9条改憲の流れが一気に現実味を帯びよう。県内選挙区の選挙結果は憲法改正の動きに確実に影響を与える。改憲の是非を慎重に判断して1票を投じたい。
 国土面積の0・6%の沖縄に、在日米軍専用施設の70・38%が集中していることで、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を県民は享受できていない。
 憲法の具現化に向かって現状を改めることも、政治の役割である。それが実現できるのは誰なのかをしっかり見極めたい。