<社説>第4次安倍内閣発足 立憲主義厳守すべきだ


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 第4次安倍内閣が発足した。安倍晋三首相は選挙期間を通じて「謙虚」を繰り返した。だが、与党が衆院の3分の2を超える中、首相の意向として国会での野党の質問時間削減を主張するなど「謙虚」とは程遠い。

 安倍首相には立憲主義、国民主権の大原則に基づいた政権運営を強く求める。
 自民、希望、公明、日本維新の会の改憲勢力は国会発議に必要な3分の2(310議席)を超える371議席に達している。しかし、共同通信が衆院選直前に実施した全国電話世論調査では、安倍政権下での改憲に賛成34・9%、反対51・3%と厳しい結果が出ている。国会議員の数と世論は乖離(かいり)している。首相が野党を軽視して、憲法9条をはじめとする改憲論議を強引に進めることは、民主主義の破壊につながる。
 自民の圧勝は、安倍政権が圧倒的に支持されたからではない。自民の小選挙区での得票率は約48%。しかし、小選挙区の議席占有率は約74%。2人に1人しか自民に投票していないのに4分の3の議席を獲得した。
 全ての有権者のうち自民に投票した割合をみる絶対得票率は約25%。自民は全有権者の4人に1人の支持しか受けていないことになる。自民の圧勝は、野党が割れたことと、少ない得票で高い議席占有率を得られる現行の小選挙区比例代表並立制の弊害といえる。
 その証拠に、特定秘密保護法、集団的自衛権、安保関連法、「共謀罪」法、原発再稼働などの重要政策について、政府方針とは反する世論が拮抗(きっこう)するか過半数を占める。
 共同通信の世論調査で内閣支持率は43・8%、不支持率44・1%と拮抗している。森友、加計学園問題で落ちた支持率は回復しておらず、国民の信任が厚いとは言い難い。
 第3次までの安倍内閣は、国会の場での議論や世論に耳を傾ける機会を最小限に抑え、最後は数の力で次々と重要法案を成立させてきた。
 これは憲法によって国家権力の力を制限し、その暴走を防ごうという立憲主義の否定である。トップダウンの傲慢な政権運営を改めるべきだ。
 一方、今回の衆院選で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力3氏が当選した。辺野古新基地を容認する自民党は1議席を獲得したが、3氏は選挙区で落選した。
 安倍政権は辺野古新基地反対の民意が再三示されているのを無視し、工事を強行している。今回も新基地建設に反対する民意が上回ったことは、安倍政権の強硬姿勢に県民は決して屈しないとの決意の表れである。
 首相官邸に権力を集中し民意を無視して対米追随路線を進むのではなく、民意と向き合い、熟議を重ねて意思決定する民主主義の原点を忘れてはならない。