<社説>トランプ大統領来日 ヘリ事故に直接抗議せよ


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 トランプ米大統領が就任後初めて日本を訪れた。6日は日米首脳会談に臨む。親密な関係で知られる安倍晋三首相は、トランプ氏の言いなりにならず、言うべきことはきちんと主張することが肝要だ。

 沖縄関係では、米軍普天間飛行場所属のヘリコプターCH53Eが東村高江の牧草地に不時着し炎上した事故について、厳しく追及すべきだ。
 事故は住宅まで数百メートルの近さで発生した危険極まりないものだった。その上、米軍は政府要請を無視して同型機の飛行再開を強行した。これに強く抗議するのは、国民の命を守る政府として当然だ。
 事故原因はいまだ究明されていない。飛行再開に対して小野寺五典防衛相は衆院選中は「遺憾」と非難したが、選挙が終わると変節し、米軍の言い分をうのみにした。
 「日本を取り戻す」「この国を守り抜く」と国家主権を強調する安倍首相だからこそ、米国のリーダーに直言できるだろう。事故の原因究明と、日本の主権を踏みにじられた飛行再開をいさめるべきだ。
 今回の事故では、県警が現場検証もできなかった。日米のガイドラインで定められた規制線に阻まれ、事故機に触れることさえできず、物証である機体残骸が米軍に持ち去られた。
 米軍機事故が起きるたびに指摘されているが、日本の捜査権を阻害している日米地位協定を改定しない限り、全容解明は不可能だ。再発防止策も絵に描いた餅にとどまる。
 日米が対等なパートナーであるなら、安倍首相は地位協定の不平等性を指摘し、抜本改定を求めるべきだ。
 併せて、辺野古の新基地建設が県民の民意に反している実情も伝える必要があろう。
 初来日の最大の焦点は北朝鮮問題とされる。核実験やミサイル開発を続ける北朝鮮に「最大限の圧力」をかけるとともに、盤石な日米同盟を誇示するとみられる。
 北朝鮮への軍事行動を含む「あらゆる選択肢」を視野に入れるとするトランプ氏を、安倍首相は「米国の立場を一貫して支持する」と明言している。
 手放しで無批判に米国に追従するのは危険だ。北朝鮮に一定の圧力をかけるのは必要だが、それが目的化してしまっては本末転倒になる。あくまでも、圧力は対話を引き出すための手段である。
 軍事行動は絶対に阻止しないといけない。戦争が起きれば甚大な被害を受けるのは日本と韓国であり、とりわけ米軍基地の集中する沖縄は危険度が一層高まる。
 トランプ氏が過激な言動で挑発を繰り返すことが、北朝鮮に核・ミサイル開発の口実を与えたとの見方もある。不用意な発言を慎むよう忠告するのも同盟国の務めである。
 米国に忠実に従うのではなく、国民の生命と財産を守る観点から盟友に耳の痛い話をすることができるか、首相の力量と資質が試される。