<社説>オスプレイ飛行強行 米軍の増長は政府に責任


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 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが飛行を強行再開した。

 機体の一部を落下させても報告せず、県やうるま市などの要求も無視しての飛行再開である。強く抗議する。
 米軍を増長させた要因は毅然(きぜん)とした姿勢で事に当たらない日本政府にある。安倍政権は米軍ではなく、国民の安全と生活を守ることを最優先させる責任を自覚すべきだ。
 オスプレイがうるま市伊計島海岸に機体の一部を落下させたことについて、小野寺五典防衛相は「公共の安全または環境に及ぼす可能性がある事件・事故」とし、日米合同委員会合意に基づき、日本側に通報されるべきものとの認識を示していた。
 米軍は日本側からの連絡を受けて事故を明らかにしただけである。これをもって通報したことにはならない。極めて不誠実な対応であり、日本政府として強く抗議するのが筋である。
 だが小野寺防衛相は抗議するかを問われ「どのような経緯で日本側に通報がなかったかということは、確認をしている」とし、抗議については触れなかった。
 主権国家としての意識が希薄だと言わざるを得ない。日米合同委で決められたルールが破られたのである。通報しなかった経緯を確認するだけで済ませてはならない。
 事故を起こしても米軍は直接、謝らないことが増えている。今回の機体一部落下事故でも、昨年10月の東村高江で普天間飛行場所属の大型輸送ヘリコプターCH53Eが不時着、炎上した事故でも米軍は県の呼び出しに応じていない。県民に不安を与え、迷惑を掛けたことを認識できないほど、米軍の組織は劣化しているのだろう。
 だが直接、謝罪したケースもあった。普天間飛行場所属のCH53が1987年4月、与那城村(現うるま市)平安座の公園に不時着した際には翌朝、操縦していた中尉とその上司が村役場に出向いて、赤嶺正雄村長に直接状況を説明し、謝罪している。
 このような対応を今は「できない」か「やらない」のである。米軍は規範意識も劣化していることの証しである。
 安倍晋三首相は施政方針演説で、基地問題に関して「沖縄の方々の気持ちに寄り添い、基地負担の軽減に全力を尽くす」と強調した。だが、安倍政権が基地問題で県民の気持ちに寄り添ったことは一度もない。寄り添っている相手は米軍である。
 その結果、米軍嘉手納基地やうるま市津堅島沖でのパラシュート降下訓練の強行や米軍機による深夜早朝の騒音激化、墜落や不時着事故、部品落下などが続発している。
 安倍政権は米軍に属国扱いされていることを深く認識し、恥じ入るべきである。対米追従姿勢を改めることこそが、真に県民に寄り添うことにつながることに、安倍首相はいい加減気づくべきだ。