<社説>米軍F15飛行再開 撤去こそ有効な安全対策


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 米軍の安全宣言は何度も聞いた。だが、事故は後を絶たない。墜落原因さえ解明されないままの飛行再開はあり得ない。強く抗議する。

 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が飛行訓練中に那覇市の南方約80キロの海上に墜落してから2日後、米軍は同型機の飛行訓練を再開した。
 県などは原因究明までの同型機の飛行中止、実効性ある再発防止策などの実施を沖縄防衛局を通して米軍に要求していた。防衛局は米軍にしっかりと伝えたのだろうか。伝えても無視されたならば、防衛局の存在意義を疑う。
 嘉手納基地を管理する第18航空団副司令官のリチャード・タナー大佐は「24時間でわれわれのF15全てを点検した結果、機体は安全に飛行再開できることを確信した」としている。
 信用できない。米空軍は、死傷者を出す重大事故が相次いでいることを受け、全ての航空機の飛行を1日停止し、安全点検を5月に実施したばかりある。点検したにもかかわらず、墜落事故は起きたのである。事故原因が分からないままでは、墜落の危険性は解消されない。
 事故原因は嘉手納基地の点検体制の不備、操縦士のミス、もしくはF15の欠陥などが考えられる。
 時間をかけて事故原因を徹底的に究明し、有効な再発防止策を講じない限り、県民の安全だけでなく、操縦士の安全も守れない。米軍はそのことを深く認識し、飛行訓練をやめるべきである。
 許せないのは日本政府の対応だ。防衛省は墜落事故が起きた際、原因が判明していないのに飛行停止を米側に求めなかった。それだけではない。飛行再開についても小野寺五典防衛相は「(米側が嘉手納基地に)今ある全機を確認した上で、飛行を再開したという判断だと思う」と述べた。まるで傍観者である。
 県民の安全が保障されていない中での飛行再開を問題視せず、米側の判断を追認する小野寺氏には、国民の安全を守る強い意志が一切ないと断じるしかない。
 墜落事故を重く受け止めず、事故原因が明らかになっていない中、飛行訓練を再開する米軍に異議を唱えず、追認することに終始する日本政府の責任は極めて重い。日本政府の主体性のなさが米軍機墜落事故の遠因にもなっていることを知るべきである。
 当事者意識のない日本政府の対応が米軍の訓練激化を招き、外来機の暫定配備を常態化させ、県民生活に重大な影響を与えている。
 F15は1979年に配備されて以降、今回を含めて県内で10件11機が墜落事故を起こしている。日本復帰後に県内で起きた米軍機の墜落事故は49件を数え、2割をF15が占め、機種別では最も多い。ここまできたら欠陥機だろう。
 最も有効な安全対策は、老朽化も進む危険なF15を全て撤去することである。