<社説>直接抗議を米軍拒否 声聞かぬなら撤退せよ


この記事を書いた人 琉球新報社

 嘉手納町議会が嘉手納基地所属のF22戦闘機の暫定配備などに抗議するため、同基地の米空軍第18航空団に面会を求めたが、同航空団は沖縄防衛局を通すようにと返答し、事実上面会を拒否した。また県が同基地所属のF15戦闘機の墜落事故について直接抗議するため、同航空団に県庁への来庁を求めたが、これも拒否した。これで「良き隣人」といえるのか。

 嘉手納町議会は6月定例会だけでも4件の抗議決議を可決している。F22の暫定配備に加え、垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの初飛来、旧海軍駐機場の使用、F15の墜落事故についてだ。全て嘉手納基地に関するもので、住民生活を脅かす事態に対する抗議だ。
 今回の面会拒否はF15墜落を除く3件の抗議決議についてだ。その後、追加で面会を求めているF15墜落の抗議については、まだ返事が届いていない。
 同航空団は昨年12月から、嘉手納町議会との面会拒否を続けている。昨年12月に最新鋭ステルス戦闘機F35Aがパネルを落下させる事故を起こした際、同航空団は「さらに提供できる情報はない」などとして、町議会の抗議の面会を拒否している。住民軽視も甚だしい。
 昨年7月、同航空団に着任したケース・カニンガム新司令官は當山宏町長を訪ねた際に「地域住民との友好関係を大事にしたい」と述べていた。しかし実際は地域住民の意向などお構いなしに、傍若無人な基地運用をしている。そして住民の声に耳を傾けようとしない。「悪しき隣人」にしか映らない。
 嘉手納町議会が基地に起因する問題に敏感なのは理由がある。F15墜落事故後、町議会の當山均基地対策特別委員長は「嘉手納がいつも事故に神経質なくらいに反応するのは、過去に(事故で)町民が亡くなっている事実があるからだ」と述べている。
 1962年12月、KB50空中給油機が嘉手納基地への着陸に失敗し、嘉手納村(当時)屋良の住宅地に墜落した。民家3棟が全焼し、24歳の男性ら村民2人の命が奪われた。役場の広場に寝かされた黒く焼け焦げた男性の遺体と対面した兄は、その場で泣き崩れている。
 66年5月にはKC135空中給油機が離陸直後、嘉手納弾薬庫のゲート付近に墜落した。道路を通行していた男性1人が巻き込まれて命を落とした。59年6月には嘉手納基地所属のF100ジェット戦闘機が石川市(当時)宮森小学校に墜落し、児童ら18人が犠牲になった。
 これ以上、沖縄の人々の命を奪わないでほしい。町議会の抗議は、こうした住民の願いを代弁したものだ。
 その声を聞こうとしないのであれば、第18航空団は沖縄に駐留する資格などない。嘉手納基地から即座に撤退すべきだ。