<社説>石垣陸自受け入れ 民意反映した判断なのか


社会
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 民意を反映した判断だったのか。中山義隆石垣市長が陸上自衛隊の配備受け入れを正式表明したのである。

 配備が計画されているのは石垣市平得大俣の約46ヘクタールで、半分の23ヘクタールが市有地だ。陸上自衛隊の警備部隊、地対艦誘導弾部隊、地対空誘導弾部隊が駐屯し、隊員規模は500~600人とされる。
 中山市長は今年3月の石垣市長選で3選を果たした。だからといって自衛隊の配備が市民のお墨付きを得たことにはならない。選挙戦では明確な賛否の表明を避けていたからだ。
 「抑止力として南西諸島に配備したいという考え方は理解できる。配備予定地周辺住民の反対もあるので、そういった声を聞き、防衛省・国と協議を重ねた上で最終的な判断をしたい」というのが市長のスタンスだった。
 予定地周辺の於茂登、開南、川原、嵩田の住民は強く反対している。市長は「議会を含めて議論を重ねた中で、賛成・反対双方で意見は出尽くしたと判断した」「住民説明会などを通じて市民の理解も深まっている」と述べた。果たしてそうなのか。直接影響を受ける人々と真正面から向き合って話し合うべきだろう。
 防衛省が中山市長に石垣島への陸自配備を正式に打診したのが2015年11月。市長は16年12月に、諸手続きの開始を了承すると発表した。明言こそ避けながらも、当初から受け入れありきだったように映る。
 18日の記者会見でも「(国防・安全保障は)国の専権事項なので受け入れないという判断はない」と述べている。
 政府の方針だからと、無条件に了とするのは極めて危険だ。国は時として事実を隠し、自らに都合のいいことだけを強調する。森友学園や加計学園の問題に対する政府の対応を見れば分かりやすい。原子力発電についても、福島第1原発事故が起きるまで「絶対安全」などと事実に反する主張を繰り返していた。
 石垣島で自衛隊が対応する事態について政府は「主として島嶼(とうしょ)部への攻撃、大規模災害といった事態を想定している」と説明する。当たり障りのない言い回しだ。
 現実には、軍事拠点ができることで攻撃されるリスクが高まる。配備を受け入れることは、取りも直さず、攻撃目標になる危険性をも受け入れることだ。中山市長は、自衛隊配備に付随する負の側面まで十分に検討したうえで結論を出したのだろうか。
 予定地の半分を占める市有地を売却するには、市議会の同意を得なければならない。9月9日に投票が行われる市議選で、自衛隊配備に反対する議員が過半数を占めれば、必要とされる用地が提供されない事態も起こり得る。
 大切なのは、自衛隊配備を巡る議論を全市民的に深めることだ。市長任せ、市議会任せにしていては禍根を残しかねない。