<社説>那覇市長選 政策見極めて判断を


社会
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 県都・那覇市のかじ取り役を決める大事な選挙の候補者が固まった。活発な政策論議を期待する。

 任期満了に伴い、10月21日に投開票(同14日告示)される那覇市長選は、事実上の一騎打ちとなる。自民党県連会長代行の県議・翁長政俊氏(69)は22日、正式に出馬を表明した。現職の城間幹子氏(67)も同日、2期目に向けた出馬を明言し、24日に出馬を正式表明する。
 共産、社民、社大、国民民主、一部保守系の市議らが支援する城間氏に対し、翁長氏は、自民、公明、維新の協力態勢を目指して挑む。4年前と同様、今回も激しい選挙戦が予想される。
 前回の那覇市長選は、翁長雄志前市長(現知事)の辞職に伴い知事選と同日に行われた。今回は11月18日実施の県知事選の約1カ月前となり、両陣営は知事選の行方を左右する最大の前哨戦と位置付けている。
 加えて、9月9日は県内26市町村議会議員選挙が実施される統一地方選最大の山場で、10月14日には豊見城市長選も行われる。これらの選挙との相乗効果もあるだろう。
 今回の那覇市長選では1期4年間の城間市政の評価が問われる。城間氏は4年前、翁長雄志氏が立候補した知事選とセット戦術を展開し、自民、公明などが推した元副知事の与世田兼稔氏を破り、那覇市政初の女性市長となった。
 城間氏は「政策の一丁目一番地は待機児童の解消」と強調した。県によると那覇市の待機児童数は4月1日時点で178人。4年前まで400人以上で推移していた状況から大きく改善されたが、目標としたゼロには達していない。市民会館の移設や第一牧志公設市場の建て替えなどにも引き続き取り組んでいる。
 翁長政俊氏は出馬会見で、城間市政について給食費の値上げや消防職員が条例の定数より少ないことを挙げ「課題が放置されたままでリーダーシップが欠如している」と批判した。経済振興を前面に打ち出し、陸上自衛隊那覇駐屯地移設による物流拠点の整備、新市民会館建設計画の見直しなどを掲げた。
 地域の活性化は重要な課題だ。大いに議論を深めてもらいたい。
 一方で、翁長氏は名護市辺野古の新基地建設問題について「争点にならない」と述べ、態度を明確にしなかった。
 米軍基地問題は那覇市民を含め県民の命や人権、生活に大きく関わる重要な案件だ。沖縄を代表する県都のリーダーとしては避けて通れない。城間、翁長の両氏とも、米軍普天間飛行場の辺野古移設はもちろん、沖縄が抱える深刻な問題について、見解を明らかにすることが求められる。
 那覇市長選の結果は、那覇市だけでなく県全体の未来をも左右する。有権者は立候補予定者が今後発表する政策に注目し、違いを見極めて選択してほしい。