<社説>自民党総裁選 新基地建設で論戦を望む


社会
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 9月の自民党総裁選に向け石破茂元幹事長は10日、出馬を表明した。安倍晋三首相も11日、出馬に強い意欲を示した。総裁選は安倍、石破両氏の一騎打ちとなる見通しだ。

 国会で多数を占める自民党の総裁選は事実上、首相を選ぶ選挙となる。選挙の情勢や政策論争はその後の政権運営に影響を与えるため、全国が注目する。
 いわゆる「安倍一強」の行方が大きな焦点だ。共同通信が自民党国会議員を対象に実施した動向調査によると、約76%に当たる310人が安倍首相を支持し、首相は国会議員票(405票)で大きくリードする。党員・党友による地方票(405票)にも影響を与えるとみられ、優勢だ。
 安倍氏を支持しない議員の間では、森友、加計学園問題をはじめとする不祥事への対応が「有権者の納得を得られていない」(石破派議員)との反発があり「1強政治を見直すべきだ」との意見がある。一方、首相支持者の中には「対立候補を支持すれば選挙後の人事などで干されかねない」との懸念がある。不祥事への対応が不十分でも保身のために問題を追及しない「イエスマン」が増えているように映る。自浄作用が働いていないことは誠に嘆かわしい。
 石破氏は出馬会見で「政治が国民に誠実で、謙虚で、正直に勇気を持って真実を語る姿勢が必要だ」と強調した。あえて持ち出すまでもなく政治家として当然の話である。逆に言えば、現在の政治は「うそ」がまかり通るほど劣化していることを物語る。本来あるべき政治を実現し、国民の信頼を回復することが喫緊の課題である。正直さが争点になる事態は情けない。
 石破氏は共同通信社での講演で、普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設について「県民の方々の理解が得られていない」と述べ、工事を強行する安倍首相のやり方を批判した。日米地位協定改定の必要性も指摘した。政治家に「正直」を求めるのなら、身をもって実践してほしい。総裁選で辺野古問題や地位協定改定を争点にし、安倍首相に堂々と論戦を挑むべきだ。発言に責任を持って実行することこそ、自身の言う「誠実」な態度である。
 ただ、石破氏は幹事長だった2013年、普天間飛行場の県外移設を公約した県選出・出身の自民党国会議員5人に圧力をかけ、強引に辺野古移設を容認させた人物だ。「県民の理解が得られていない」と言うのなら、かつての自身の行為を反省し、やり方を改めるべきだ。
 大きな争点である憲法9条改定問題は安全保障政策と直結する。「日米同盟」を重視するのなら、米軍基地のリスクを過重に負担している沖縄の基地問題の解決は安全保障とコインの表裏の関係である。辺野古新基地建設の在り方をはじめとする沖縄の基地負担軽減も争点にし、正々堂々と意見を戦わせるべきだ。