<社説>辺野古に活断層 国は全調査結果の開示を


社会
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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、埋め立て予定地に存在が指摘されている活断層が、2万年前か、それより新しい時期に動いたもので、今後動く可能性が高い活断層であることが分かった。

 活断層は過去に地震を起こした形跡があり、将来も地震を起こす可能性がある断層のことだ。専門家によれば、2万年前の断層というのは非常に新しい断層で、これから先も動く可能性が高いという。
 辺野古崎には新基地建設予定地の陸上部に「辺野古断層」と「楚久断層」という2本の断層が存在することはかねて指摘されてきた。その断層の延長線が交差する海底に、断層によると考えられる深さ約60メートルの落ち込みが確認されている。
 「名護・やんばるの地質」(2011)を著述した遅沢壮一東北大講師が沖縄防衛局による音波探査調査とボーリング調査のデータを検討した結果、海底部も辺野古断層であると認めた。さらに「2万年前以降に繰り返し活動した、極めて危険な活断層である」と指摘した。
 原子力発電所の場合、日本では活断層の上には中枢施設は造れない。現在原発が立地していても再稼働はできないとされる。東京電力福島第1原発の事故を教訓に設定された原子力規制委員会の新規制基準では、約12万~13万年前より新しい年代にずれた可能性が否定できない断層を「活断層」と定義し、原発建設を制限している。
 実際、北海道電力泊原発は、立地する積丹半島の沖に海底活断層がある可能性があるとして、規制委から活断層を想定して影響を再検討するよう指示され、再稼働のめどは立っていない。
 辺野古新基地には辺野古弾薬庫も集積される。V字形の2本の滑走路は弾頭を積んだ戦闘機の訓練も行われる。ひとたび地震が起きれば周辺地域を含め、大きな被害をもたらす恐れがある。
 しかし、政府は危険性を認めていない。活断層の存在や埋め立て予定海域が軟弱地盤であることなどは、開示していなかった。
 調査結果が分かったのは、市民が情報公開請求によって沖縄防衛局が13、14年度に行った地質調査結果の報告書を入手したからだ。
 にもかかわらず政府は17年11月に「辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」との答弁書を閣議決定した。沖縄防衛局は17年に海底資源調査船ポセイドンで辺野古海底の二つの断層を調査しているが、調査結果を明らかにしていない。
 県は活断層の存在や軟弱地盤などを挙げて埋め立て承認を撤回する方針を示しているが、撤回は住民の安全を図る上でも理にかなっている。政府は持っている地質調査などの結果全てを公表し、辺野古新基地建設計画を断念すべきだ。