<社説>知事選すでに前哨戦 候補者の主張が聞きたい


社会
この記事を書いた人 琉球新報社

 9月30日投開票の県知事選挙は、県政与党などが擁立する衆院議員の玉城デニー氏(58)が正式に出馬を表明した。自民などが推す前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)が先に立候補を表明しており、第8代の沖縄県知事を決める前哨戦が始まった。

 現職の知事の急逝に伴い任期満了を待たない異例の選挙だが、県民の将来を左右する極めて重要な選挙であることは間違いない。
 有権者は候補者の人柄をよく吟味し、政策の実現性、先見性、ひいては指導力もしっかり見極め、貴重な1票を投じたい。候補者は公開討論会や紙上座談会を含め、あらゆる機会を利用して積極的に互いの政策を戦わせ、有権者に判断材料を提供してほしい。
 今選挙は4年前に続き、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設問題が最大の争点になる。前回知事選は辺野古新基地建設反対を訴えた翁長雄志氏が圧勝した。翁長知事は前知事が承認した辺野古の海の埋め立てを取り消し、国との法廷闘争となったが、最高裁で県の敗訴が確定した。国は近く土砂を投入し埋め立てを本格化させる方針だ。対して県は埋め立て承認を撤回する方針で対立している。
 一方で、前知事が辺野古の埋め立てを承認した際に政府が約束した、普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の期限も2019年2月に迫るが、政府は具体的な動きを見せていない。17年12月には普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校にヘリの窓が落ちる事故が起きた。普天間の危険除去は喫緊の課題だ。
 第5次となる沖縄振興計画は次期知事の任期中に期限切れを迎える。日本復帰50年の節目に、沖縄の将来像をどう描くか。候補者の口から聞きたい。
 子どもの貧困対策や全国一高い失業率の解消も課題だ。活況を呈する県内経済を県民生活の向上に取り込んでいく策も求められている。
 投票に当たって、判断基準になるのは候補者の言葉だ。
 辺野古新基地建設に関して玉城氏は「翁長知事は『あらゆる手段を尽くして辺野古新基地建設を止める』と言っていた。私も受け継いでいく」と述べた。佐喜真氏は考えを明示せず「普天間飛行場をどうやって、誰が、どういう形で返還を実現できるのかを県民に問いたい」と述べた。
 辺野古問題を含め、まだまだ候補者の考えは見えていない。主張の違いを明確にし、県民に訴えていく必要がある。ポスト振興計画や経済政策なども考えを知りたい。
 マックス・ウェーバーは著作「職業としての政治」で「どんな事態に直面しても『にもかかわらず』と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への『天職』を持つ」とした。沖縄のさまざまな課題に対して自身の主張を堂々と論じ、有権者に示してほしい。