<社説>9月平壌共同宣言 朝鮮半島の平和期待する


社会
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 韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の3度目の会談が行われ「9月平壌共同宣言」が発表された。非核化への具体的措置が示され、軍事的緊張緩和と経済・民生の協力強化がうたわれた。朝鮮戦争の終結に向けてさらに一歩踏み出したものとして評価する。

 核とミサイル問題について「米国が相応の措置を取れば寧辺の核施設の廃棄など追加措置を取る用意がある」「東倉里のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台を専門家立ち会いの下、永久に廃棄する」と表明した。トランプ米大統領は歓迎しており、米朝交渉が再開されそうだ。朝鮮半島の早期の非核化を期待したい。
 年内にも金委員長がソウルを訪問する。板門店で2回と相互の首都訪問で、1年間で4回目の会談となる。緊張緩和の動きは一層加速するだろう。
 宣言では「朝鮮半島を恒久的な平和地帯とするための実践的措置を講じていく」と確認し「偶発的武力衝突防止のために常時の意思疎通と緊密な協議を進める」とした。
 また、南北を結ぶ鉄道と道路の年内着工、経済協力の象徴である開城工業団地、金剛山観光事業の正常化を掲げた。保健・医療分野の協力強化、離散家族問題の根本的解決のための人道的協力の強化、2032年夏季五輪の共催誘致も盛り込んだ。
 今回の宣言は、南北の両首脳が事実上、戦争終結状態を確認したものといえる。最終的な終結宣言には、戦争に加わった米国、中国の参加が必要だ。朝鮮戦争休戦から65年、冷戦終結から27年を経て現在があることを考えるなら、簡単に実現できるわけがない。一つ一つ着実に進めていくしかない。
 北朝鮮の核開発と大陸間弾道ミサイル実験で、米朝の戦争が心配された昨年から状況が一変した。休戦状態のままの朝鮮戦争を終結させ、朝鮮半島を平和の地にしようという文大統領の信念とリーダーシップが牽引(けんいん)したことは間違いない。
 一方、一連の首脳会談に対して「蚊帳の外」と揶揄(やゆ)されてきた日本政府の姿勢はどうだろうか。8月に閣議報告された18年版防衛白書では、北朝鮮の核・ミサイルについて「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と明記した。そして地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入を進めている。平和への努力の足を引っ張ることだけはやめてもらいたい。
 米朝交渉の進展で朝鮮半島の非核化、在韓米軍の縮小・撤退が実現すれば、戦争の可能性は小さくなる。沖縄に広大な米軍基地を置くための口実の一つがなくなる。日本政府は、脅威をあおり米国に追随するだけの姿勢をやめるべきだ。沖縄も信念を持って、自らの立場を世界に発信する自治体外交、民間外交を展開する気概を持ちたい。