<社説>宜野湾市長選告示 未来を託す重要な1票だ


社会
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 宜野湾市長選が23日告示され、県高校PTA連合会前会長の仲西春雅氏と、前宜野湾市副市長の松川正則氏の両新人による一騎打ちが確定した。

 最大の争点は、米軍普天間飛行場の返還・移設問題である。日米の返還合意から既に22年が過ぎたが、宜野湾市民にとって現状は変わらない。むしろその間、騒音だけでなく事故の恐怖も増している。「欠陥機」と指摘されているオスプレイ24機が配備され、うち2機が名護市安部と豪州でそれぞれ墜落した。所属機のトラブルも後を絶たない。
 名護市辺野古の新基地完成まで普天間飛行場を返還しないとする政府の姿勢は無責任極まりない。「一日も早い危険性除去」をうたいながらも、本紙世論調査でも県民の6割以上が反対する新基地建設を返還の前提とし、これらの危険性を放置しているからである。危険のたらい回しに県民が反発を強めると「普天間の固定化」をちらつかすことさえしてきた。
 そもそも普天間の危険性が放置されているのは、県民ではなく政府の責任である。この点は何度でも確認したい。
 宜野湾市民は我慢の限界を超えている。今回と同じく普天間飛行場の返還・移設問題を最大の争点にした2016年1月の前回宜野湾市長選以降も、緑ヶ丘保育園に米軍機の部品が落下したり、普天間第二小に米軍ヘリの窓が落下したりした。米軍は再発防止策どころか、原因究明さえままならない。抜本的解決は普天間飛行場の即時閉鎖、返還しかない。
 今回の市長選は県知事選と同日だ。仲西、松川両陣営は知事候補とセット戦術を展開している。知事選の最大の争点である辺野古移設の是非も問われている。知事選を機に県民全体で宜野湾市民の被害や危険への恐怖にも思いをはせたい。その意味で宜野湾市民と他の県民との思いがつながる選挙戦であってほしい。双方が願いを一つにし、宜野湾市民も県全体の課題に向き合う、そんな判断が問われる選挙だ。宜野湾で起きていることは沖縄全体の象徴だ。その認識に立ってこそ、セット選挙の意義がある。
 宜野湾市長選の両候補とも普天間飛行場の一日も早い返還では一致している。危険を放置し続けている政府は、どちらが当選しても重く受け止めるべきだ。両候補者は具体的に返還をどう実現するか、論争を深めてほしい。
 市長選では他にも米軍基地の跡地利用など、まちづくりや暮らしに深く関わる多くの争点がある。待機児童問題や地域の活性化などだ。市民の目線で生活をどう向上させるか、これらの課題も重要だ。解決策に耳を傾けたい。
 宜野湾市には沖縄が抱える問題が凝縮している。全国も注目している。宜野湾市の有権者にとっては知事選とともに沖縄の未来を託す重い1票だ。両候補には、その重みに応える論戦を期待する。