<社説>きょう知事首相会談 「辺野古唯一」捨て対話を


社会
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  上京中の玉城デニー知事がきょう、安倍晋三首相、菅義偉官房長官と就任後、初めて会談する。安倍政権が、知事就任9日目に会談に応じるのは、翁長雄志前知事への対応に比べると随分早い。

 米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の新基地建設について、玉城知事は翁長前知事の遺志を継ぎ、明確に建設阻止を訴えて初当選した。
 39万6632票という過去最多得票によって示された圧倒的な民意を前に、安倍政権としても沖縄県への丁寧な対応をアピールする狙いがあるのだろう。
 対話に応じたポーズを示すだけのアリバイ的な会談であってはならない。安倍政権として「辺野古が唯一の解決策」という硬直した思考を捨て去り、沖縄県の求めに応じて新たな道を探ることが大切だ。
 2014年12月に翁長前知事が就任した後、安倍首相、菅官房長官は知事と会おうとしなかった。就任あいさつで上京した際も「名刺だけでも渡したい」とした翁長前知事に取り合わなかった。結局、安倍首相が官邸で翁長前知事と初めて面談したのは約4カ月後の15年4月だった。
 官邸で握手を交わした後、安倍首相は沖縄の振興策から話を切り出し、「辺野古移転が唯一の解決策」と通り一遍の話に終始した。振興策の話題を受け流した翁長知事が「選挙で辺野古新基地反対という圧倒的な民意が示された」と強調すると、安倍首相の表情が一転、こわばった。
 16年には辺野古の代執行訴訟で和解が成立し、国と県との話し合いが求められた。しかし、協議は数カ月で決裂した。その後、6月23日の沖縄全戦没者追悼式典で顔を合わせはしても、首相と知事の本格的な対話はないままだった。
 国はその後、自然環境保護などを懸念する沖縄県の訴えを無視し、協議に応じなかった。問答無用の形で新基地建設を強硬に進めている。今年8月には辺野古海域に一部の護岸を完成させた。
 共同通信社が県知事選直後の今月2、3両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、普天間飛行場の辺野古への移設を進める政府方針について「支持しない」は54・9%で、「支持する」34・8%を上回った。県知事選で示された沖縄県民の意志を踏まえた結果だ。
 国と県が法的手段を通じてではなく、話し合いで解決策を探るのが、あるべき姿だ。安倍政権が対話のテーブルに戻るのは当然である。
 会談で玉城知事は辺野古新基地建設阻止など自身の考えを説明し、沖縄の負担軽減などへの協力を求める構えだ。まずは民意を背景にした玉城知事の訴えを聞き、新たな策を考えるのが真の対話だ。
 ここまで明確に示された沖縄の声に耳を傾けず、国家権力で押し切るなら、もはや民主主義国家とは言えない。