<社説>新聞週間 ファクトチェックは使命


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 きょうから新聞週間が始まった。71回目の今年は「真実と 人に寄り添う 記事がある」が代表標語だ。

 ネットを中心にフェイク(偽)ニュースがあふれる中、事実に裏打ちされた報道を続けてきた新聞社として、自らの役割と責務を改めてかみしめ、真実を追求する姿勢を持ち続けたい。
 琉球新報は今回の県知事選から「ファクトチェック(事実検証)」報道を始めた。これまで放置されがちだったネット上にはびこるデマやうそ、偽情報を検証し、その都度、記事を掲載した。
 最近の選挙では、明らかに誤った情報や真偽の不確かな情報が、あたかも事実であるかのように会員制交流サイト(SNS)などで拡散していた。投票行動に影響を及ぼす恐れも危惧されていた。
 中には現職の国会議員や元首長など公職経験者が、事実確認もせず、無責任に真偽不明の情報を流布させる事例もあった。公職選挙法では虚偽情報を流せば処罰対象となる。
 本紙は知事選で4本のファクトチェック記事を掲載したが、選挙運動の正常化に一定の貢献はできたと自負する。
 だが、SNSの拡散力は強い。偽ニュースに対しては、取材力と信頼度のある新聞などの既存メディアが正面から取り組んでいかないといけない時代だ。本紙の使命と覚悟も重いと認識している。
 新聞には、権力を監視する重大な責務がある。強大な権力をかさに着て国家が弱者や国民の権利を踏みにじることがないか、目を光らせるのも、民主主義のとりでとしての不可欠な役割だ。
 その権力の横暴と言えるのが辺野古新基地問題である。
 知事選では、安倍政権が強力に推した候補に、新基地反対を訴えた玉城デニー氏が大差で勝利した。新基地を拒む民意が示されたのは、もう何度目か。政府が新基地強行に拘泥するのは民主主義の否定であり、到底許されない。
 ここでも偽ニュースが流された。菅義偉官房長官は普天間飛行場の辺野古移設と在沖米海兵隊のグアム移転がリンクしていると発言した。2012年の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、両者を切り離すことで合意しているにもかかわらず、である。
 フェイクニュースの「元祖」と言えば、トランプ米大統領だ。自身に批判的な報道を「フェイクニュース」とうそぶき、メディアを攻撃している。
 これに対し、新聞社など450近い全米の報道機関が8月、社説で一斉に異議を唱え、報道の自由の必要性を訴えた。フェイクは許さないという報道人の矜持(きょうじ)が感じられる。対岸の火事ではない。
 本紙は今後も、読者の知る権利に応えるために、真実に迫る報道に精力的に取り組みたい。併せて、新聞週間テーマの「人に寄り添う記事」のように、人々の喜怒哀楽を伝え、地域とともに歩む紙面作りを心掛けていきたい。