<社説>14日辺野古土砂投入 法治国家の破壊許されぬ


社会
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 沖縄の民意を顧みない安倍政権の強硬な姿勢はとどまるところを知らない。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設を巡り、岩屋毅防衛相が沿岸部への土砂投入を14日に開始する方針を表明した。これに先立ち名護市安和の民間の桟橋で搬出用の船に土砂を積み込む作業が始まっている。

 9月30日の県知事選で新基地建設反対を掲げた玉城デニー氏が政権与党の全面支援を受けた候補者を大差で下してからまだ2カ月余りしかたっていない。玉城知事が求めた1カ月の集中協議を終えた途端、強権を発動する政府のやり方は横暴そのものだ。
 2013年に仲井真弘多元知事から埋め立ての承認を受ける際に沖縄防衛局が提出した願書には、土砂の搬出場所を「本部地区」「国頭地区」と記載していた。当初は本部港(本部町)から土砂を搬出する計画だったが、台風で港の一部が破損した。急きょ使用することになった民間桟橋は名護市安和にある。本部町でも国頭村でもない。計画を変更するなら、事前に県の承認を得るべきだ。
 政府は工事を再開するため、私人を救済する仕組みである行政不服審査制度を利用した。そのこと自体、違法行為にほかならない。その上、提出書類に明記していない場所から土砂を搬出している。
 政府は特別だから法を曲げても約束をほごにしても許されると言うのか。法治国家としてあるまじき行為だ。
 岩屋防衛相は、「不退転の決意か」との記者の質問に「そうだ。沖縄の負担軽減や普天間返還のための唯一の方策が辺野古移設だ」と答えた。国民を守るべき立場にある防衛相が不退転の決意で沖縄県民に対峙(たいじ)する構図は尋常ではない。県民に強権を振りかざすためではなく、米国に移設計画の見直しを求めるために不退転の決意を示すべきだ。
 県の試算によると、埋め立て工事費は軟弱地盤への対策などを加え2兆5500億円に達するという。防衛省が資金計画書で示した2400億円の10倍超だ。米軍基地を建設するために、これほどの血税を投じることは経済合理性に反する。その上、生物多様性の宝庫である貴重な海が不可逆的に破壊されるのだから、常軌を逸している。
 今やなりふり構わなくなった政府は、沖縄の基地負担軽減という本来の目的を見失い、新基地建設自体が目的化した感がある。
 来年2月24日には埋め立ての賛否を問う県民投票が行われる。新基地建設の是非はその結果に従い判断すべきだ。計画外の民間桟橋を使ってまで事を急ぐのは県民投票の前に、既成事実を積み重ねる狙いがあるのだろう。
 危険性除去に名を借りた基地の拡充強化は許されない。政府は沖縄の民意、法外な建設費、自然環境の破壊といった要素を冷静に受け止め、速やかに工事を中止すべきだ。