今回も政治的なさじ加減が垣間見える予算となった。
2019年度の沖縄関係予算案が3010億円に決まった。18年度当初予算と同額だ。沖縄振興一括交付金は95億円減の1093億円で、12年度の制度創設以来最低となった。
今回の予算編成の特徴は、国直轄の比率が一段と高まったことだ。18年度と同じ3010億円ではあるが、内訳を見ると、国直轄の分が60%から63%に増えている。
自由度の高い一括交付金を大幅に減らした上に、県を通さず国が直接市町村などに交付できる「沖縄振興特定事業推進費」を新設したのが大きな理由だ。
辺野古移設という国の施策に従わない玉城新県政へのけん制ではないか。
そもそも一括交付金とは、国によって使い道が定められている「ひも付き補助金」の代わりに、地方自治体が一定程度自由に使途を決められる地方交付金だ。
沖縄の自立度を高めるため、実需に合った予算編成をすることが狙いだったはずだ。14年度をピークに5年連続で減少してきた。制度の原点に立ち返り、沖縄側の自主性を重んじた形にすべきだ。
一方で、気掛かりなのは、新設の「沖縄振興特定事業推進費」(30億円)だ。名目は「一括交付金の補完」だが、国から市町村に直接交付できるため、国の関与が必要以上に強まる懸念も出てくる。
県を飛び越えて財政支援するとなると、県と市町村が協議し配分額を決めるという一括交付金の理念から懸け離れてしまう恐れはないか。
国の施策に沿う自治体だけを優遇する新たな「アメ」として使うことがないよう求めたい。沖縄の自立を奪う結果になってはいけない。「機動性を持って迅速・柔軟に対応」との目的を果たしてほしい。
沖縄予算については、13年に安倍晋三首相が「21年度までの3千億円台確保」を約束した。仲井真弘多元知事が辺野古移設を容認したのと引き換えだった。
3010億円という数字は辛うじて保ったように見えるが、果たしてそうだろうか。当初から指摘されているが、那覇空港第2滑走路増設事業の230億円超(19年度)は、本来なら国管理の空港だから政府の空港整備勘定に計上すべきものだ。
これを差し引けば3千億円は既に割っている。政府の水増しで、見かけ上は3千億円台になっているにすぎない。
政府は沖縄関係予算と基地問題を関連づけるリンク論を表向きは否定する。だが、過去に菅義偉官房長官が「工事が進まなければ予算が少なくなるのも当然ではないか」、島尻安伊子元沖縄担当相は「全く影響がないというものではない」と発言している。
基地問題と取引するような予算措置は国の財政規律に反する。沖縄の自主性を尊重し、自立を進めるという沖縄振興の原点に立ち返るべきだ。