<社説>辺野古設計変更へ 工事を止めて説明せよ


社会
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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、大浦湾側に軟弱地盤が存在することを政府がようやく認めた。地盤改良工事に向けて設計変更を県に申請する方針であることが明らかになった。

 沖縄の基地問題について、政府は都合の悪い事実を隠すことを続けてきた。それが今度も繰り返された。
 記者会見で岩屋毅防衛相は、国土交通大臣に行政不服審査法に基づく審査を請求していることを理由に説明を拒んだ。県民を愚弄(ぐろう)するような姿勢である。政府に工事をする資格はないと、改めて強調したい。
 軟弱地盤の存在が公になったのは昨年1月、市民の情報公開請求によってである。開示されたボーリング調査報告書には、2本の活断層があることも示されていた。
 報告書は16年3月にまとめられている。その時点で活断層と軟弱地盤の存在は分かっていたはずである。しかし政府は17年11月、「辺野古沿岸域に活断層が存在するとは認識していない」との答弁書を閣議決定するなど、ごまかし続けた。
 この時期、当時の翁長雄志知事は埋め立て承認撤回を検討すると何度も表明していた。県知事選挙も控える中で、政府は新基地の実現可能性が揺らぐ事実を隠してきたのではないか。
 これが政府のすることだろうか。まるで詐欺師顔負けの手口ではないか。
 今回、設計変更が明らかになったのは、現在土砂を投入している区域に隣接する区域でも新たに土砂投入を開始すると県に通知したタイミングだ。後戻りできなくなったと印象付けた上で、難工事となる大浦湾側の作業に着手しようという狙いであろう。
 普天間飛行場を5年以内に運用停止すると約束した期限が来月に迫っているが、政府は何もしていない。この設計変更も、「2022年度以降」としてきた普天間返還の時期をさらに遅らせる理由にしかねない。
 軟弱地盤の存在は、昨年8月に知事権限で埋め立て承認を撤回した理由の一つである。そもそも、世界的価値のあるかけがえのない貴重な生態系を破壊すべきではない。県は、設計変更をして工事を続けても完成まで13年以上かかると見積もっている。普天間返還の時期が見通せない中で、設計変更を承認することはあり得ない。
 政府が軟弱地盤を認めたことは、来月実施予定の県民投票で重要な判断材料になるだろう。4月の衆院3区補選、7月の参院選でも争点となるのは間違いない。
 これ以上、工事を続けることは許されない。政府は直ちに工事を中断すべきである。今やるべきことは、工期や工事費がどうなるか、普天間飛行場はいつ運用停止できるのか、返還はいつ実現するのかについて、正直に県民、国民に説明することである。