<社説>CV22嘉手納飛来 許せない危険と負担増


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍横田基地に配備されている米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ4機が米軍嘉手納基地に飛来した。2機が北方への飛行をした後、4機ともタイでの訓練に向かったとみられる。嘉手納基地の周辺住民にとっては、飛来だけでも大きな負担増だ。断じて容認できない。

 昨年10月、横田基地(東京都福生市など)に5機のCV22が正式配備された。正式配備の前から日本全国を飛び回っており、昨年6月に嘉手納基地に初めて飛来した。それ以来2度目だ。
 その際、警告表示があったとして奄美空港に緊急着陸した。1機はエンジン交換もして1カ月も駐機し、民間機の運航にも影響があった。
 固定翼と回転翼を併せ持つオスプレイは当初から機体構造上の不安定さが指摘されてきた。多発する事故がその危険性を証明している。横田基地配備によって、首都圏を中心に日本中が沖縄と同じ危険にさらされるようになった。
 CV22の10万飛行時間当たりのクラスA事故率は4・05で、米海兵隊普天間飛行場に配備されているMV22の3・24を上回る。専門家はCV22の方が低空飛行が多い分、事故率が高いと指摘している。
 横田基地のCV22は特殊作戦任務に当たる機体である。米政府が作成した配備に関する「環境レビュー」によると、沖縄で離着陸や空対地射撃、夜間飛行訓練などを実施するとしている。
 事故率のより高いCV22が今後、嘉手納基地を拠点に沖縄で訓練をする可能性がある。「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)」が反発を強めるのは当然だ。
 そもそも、離着陸時に回転翼機となるオスプレイは嘉手納基地で安全に運用できるのだろうか。
 1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で普天間飛行場の代替案として「ヘリポートの嘉手納飛行場への集約」も挙げられていた。それが廃案になった理由の一つが、戦闘機など固定翼機と回転翼機が同居することの危険性だった。民主党政権時代に普天間基地の嘉手納統合案が浮上した際も、断念する理由になった。
 戦闘機が頻繁に飛び交う嘉手納飛行場では、一時的な4、5機の飛来であっても回転翼機である以上、危険性は高まるはずだ。
 しかも、嘉手納基地は現在、滑走路1本だけで運用されている。北側の滑走路が補修工事のため閉鎖されているためだ。1月にはその1本の滑走路で、F15戦闘機が向かい合う形で緊急着陸する事態があったばかりだ。U2偵察機が補助輪を付けたまま飛び立ち、間もなく引き返すという事故もあった。
 嘉手納基地の危険性はこれまでになく高まっており、住民の苦痛は限界を超えている。「負担軽減はどこに行ったのか」という憤りに日本政府は応える義務がある。