<社説>安倍総裁4選論 むしろ早期退陣求めたい


社会
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 いわゆる「安倍1強」がさらに強権的になることを危惧せざるを得ない。自民党の二階俊博幹事長は12日の記者会見で安倍晋三首相の党総裁選連続4選論を巡り「十分あり得る」と述べた。この発言が波紋を広げている。

 任期を連続3期9年までとする党則を改正し総裁選で当選すれば、任期は2021年9月から24年9月まで延びる。12年12月以降、約12年間にわたって安倍首相が権力を握る構想に、野党からは「よほど人材がいないのか」といった批判が噴出した。
 安倍首相は夏の参院選への影響を懸念してか、14日の参院予算委員会で「ルールに従うのは当然だ」と述べたが、自民内には4選に賛同する声もある。当初禁じられていた3選を認めさせたのと同様、多数の国会議員・支持者をバックに、4選へ向かう可能性は否定できない。
 総裁任期の延長は危険である。自民党もその問題意識の下、1980年に多選を制限した。戦後最長の約7年8カ月(64~72年)の長期政権を築いた佐藤栄作首相に対し「権力が集中する」といった批判があったため連続3選を禁じた。この党則を改正し3選された安倍首相がそのまま任期を務めれば、佐藤氏を1年4カ月も上回る憲政史上最長の首相となる。
 英国の歴史家アクトンは「絶対的権力は絶対に腐敗する」との格言を残した。歴史や諸外国の例を見ると、絶対的な権力は堕落する可能性が高い。政治の私物化や汚職、組織の硬直化にもつながる。法や党のルールで多選を制限することは、それらの有効な予防策だ。米国の大統領は2期8年、韓国は1期5年までと憲法で定められている。
 長期化した「安倍1強」の弊害は既に顕著だ。憲法9条の解釈変更による集団的自衛権の行使や地球規模での他国軍支援を可能にする安保法制の制定では、国民を戦争や紛争に巻き込む危険を顧みない政策を断行した。
 森友学園・加計学園問題では、国民ではなく首相を見て仕事をする議員や官僚が首相周辺に増えていることを印象づけた。「イエスマン」が増えたことで、不祥事の自浄作用が働かないのだ。
 「安倍忖度(そんたく)という利益誘導政治だ」と野党が批判するのも無理はない。自民党内にも「1強政治は見直すべきだ」との指摘があり、昨年9月の総裁選で争点にもなった。
 沖縄の米軍基地問題に対しては、歴代首相には見られない強権ぶりだ。知事選や国政選挙、県民投票で何度も辺野古新基地建設反対の民意が示されても、お構いなしに工事を強行している。総裁任期が延びれば、さらに強権的になる恐れがある。
 これ以上、暴走は許されない。選挙や県民投票という民主的手続きで示した民意を踏みにじり、私物化に映る政治を改められない政権には、むしろ早期退陣を求めたい。