<社説>衆院補選政策固まる 沖縄の未来描く論争望む


社会
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 玉城デニー氏の知事選出馬で欠員となっている衆院沖縄3区の補欠選挙に向け、立候補予定者の政策が出そろった。4月9日告示、21日投開票で、県内では東村長選と共に平成最後の選挙で、沖縄の次代を占う重要な選択となる。

 選挙戦は、自由党県連が擁立したフリージャナリストの屋良朝博氏(56)と元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏(54)=自民公認、公明推薦=による事実上の一騎打ちとなる見通しだ。
 沖縄3区は名護市辺野古を含む。米軍普天間飛行場の辺野古移設の是非が最大の争点だ。屋良氏は辺野古新基地建設反対を前面に訴え、島尻氏は容認を表明している。
 辺野古新基地建設に伴う埋め立ての是非を問う2月の県民投票後、初の県内選挙となり、再び民意が問われる。
 昨年の名護市長選、宜野湾市長選、県知事選では自民、公明、維新が推す候補は移設の賛否を明確にしなかった。しかし今回は、この問題を正面から議論することになる。
 加えて本島中北部の経済振興や医療・福祉、教育など幅広い分野で政策論争が繰り広げられる見通しだ。生活に根差した暮らしの課題についても議論を深めてほしい。
 屋良氏は、米軍基地問題を前面に出し、28項目の政策のうち8項目を基地問題に割く。普天間飛行場を運用する海兵隊について「運用を変えるだけで沖縄から移すことは可能になる」との持論を展開し、選挙戦では辺野古移設を根本から問う構えだ。経済振興では路面電車の整備、教育では沖縄のアイデンティティーを学ぶ授業など独自色を打ち出している。
 島尻氏は辺野古問題について普天間の危険性を一刻も早く除去するために「苦渋の選択であるが容認せざるを得ない」との姿勢だ。スローガンに「沖縄の暮らしを豊かに」を掲げ、南北縦貫鉄道の整備や大型クルーズ船の寄港推進などを訴えている。沖縄北方担当相や大臣補佐官時代の実績や政府とのパイプをてこにした政策実現力を前面に出している。
 基地問題に加え、経済政策でも、沖縄振興計画が期限を迎える2021年度を見据えた議論も交わされるとみられる。沖縄の将来にとって重要な意味を持つ選挙になることは間違いない。
 玉城県政誕生後、初の国政選挙でもあり、現県政の評価も問われる。玉城知事は後継として屋良氏を擁立した。同氏を支援する「オール沖縄」勢力の真価も試される。島尻氏側は菅義偉官房長官から激励を受けるなど政府をバックに自公維態勢で臨む構えだ。昨年の知事選に続き、両勢力の全面対決になる。
 補選の結果は、夏の参院選に影響する。候補者は沖縄全体のかじ取りを意識した政策を提言し、論議を深めてほしい。有権者にとっては、沖縄の未来を考え、描く機会にしたい。