<社説>県民意識調査 子の貧困解消に全力を


社会
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 沖縄戦で焦土と化し、無から復興せざるを得なかった沖縄社会が抱え続ける課題を今、克服しなければならない。県民の強い決意にも思える。

 県が昨夏、実施した第10回県民意識調査で、県が取り組むべき施策として「子どもの貧困対策の推進」を挙げた人が42%に上り、最多となった。子育て世代の生活の厳しさと、育児環境の整備に県民が強い関心を寄せている表れだ。世代を超え連鎖した貧困を断ち切り、未来を担う子どもを育む必要がある。
 調査は県民の価値観やニーズを捉えて県政運営に生かそうと、3~5年ごとに実施される。今回、県が重点施策の選択肢に初めて「子どもの貧困対策の推進」を入れたところ、過去3回の調査で1位だった「米軍基地問題の解決促進」の26%を抑え、最も多かった。
 行政が特に力を入れるべきこととして「子どもの居場所の設置」37%、「学習支援」36%の二つが3割を超えた。貧困により孤独や学習不足に陥らないよう、子どもに寄り添う支援が求められている。次いで「ひとり親家庭への支援」29%、「労働環境の改善」28%と、経済的な支援策を求める意見が続いた。
 行政以外に期待する役割は「企業による雇用促進」が48%と5割に近く、「労働関係団体による労働条件改善に向けた取り組み」39%と、保護者の就労関連が上位となった。社会全体で雇用の質の底上げを図らねばならない。
 暮らし向きが「良くなった」が3年前の前回調査より3・5ポイント上がった23・2%で、好況の実感が見られるとはいうものの、自らの生活を「中の下」「下」とした人は34%に及び、全国の25%を上回っている。
 県民が望む施策の2番目に挙げられた「基地問題の解決促進」だが、全国の米軍専用施設の7割が沖縄に集中する状況に、66%が「差別的だ」と感じている。沖縄の負担軽減が進まない状況に「差別」を見る人は依然として多い。
 離島住民対象の調査では8割が島に誇りを感じ、7割超が「島に生まれて良かった」と答え、強い愛着がうかがえる。一方34%が、20年先に今より発展し、輝いているとは「思わない」と不安視する。施策要望の生活必需品の価格や島外へ出る際の交通費、ガソリン価格の安定への対応も求められる。
 県民の要望は次世代育成や生活の質の向上、基地問題の解決に向けられている。国、県、市町村は生活に根差した県民の不安に耳を傾け、子どもの貧困の解消、非正規雇用の多い雇用環境の改善、真の基地負担軽減に取り組んでほしい。
 意識調査では85%が「幸せ」と感じ、82%が沖縄に生まれて「良かった」と回答している。幸福感をより多くの人に広げるためにも、私たちにもゆいまーるの助け合いの心が求められる。